『山女』の日本外国特派員協会記者会見が6月26日(月)に都内で行われ、山田杏奈、福永壮志監督が登壇した。

大飢饉に襲われた東北の寒村。先代の罪を負った家の娘・凛は、村人から蔑まれながら息をひそめて生きていた。そんなある日、凛の父・伊兵衛が村中を揺るがす事件を起こす。村人たちから糾弾される父をかばい、自ら村を去り禁じられた山に入る凛を待ち受けていたのは、伝説の存在として恐れられる“山男”だった…。柳田國男の名著「遠野物語」から着想を得たオリジナルストーリーとなる本作。

冒頭では流暢な英語で挨拶した福永監督と山田。18世紀を舞台にした本作に出演するにあたって「私がイメージする時代劇は、所作とかをしっかりとしなければいけないイメージだったんですけど、今回はあの村に生まれた凛という女性をどのように作っていこうかというところからアプローチをしていった」と話す山田は「彼女がこういう境遇で、一人の人間で何を考えて過ごしていたのかなということのほうが考えていた」と振り返った。

ほとんどのシーンが屋外での撮影となった本作だが「全編ロケ撮影で、山形県にあらかじめ作られたセットに装飾を加えました。早池峰山以外は山形県で撮影しました」という福永監督は「洞窟も実際に人々が使っていた洞窟で、そこから来るパワーも役者は活かしてくれた」という。「森の中で撮影をして、そこから力をもらっていた部分は大きかったと思います」という山田だが、大変だったことを聞かれると「虫が大変だったくらいですかね(笑)虫に刺されて」と明かし、笑いを誘った。

自身の過去作との共通点については「どこが似ているか似ていないかを意識しているわけではないんですけど、作った後に共通点が出てきた」と明かす福永監督は「若い時に日本を出て長い間アメリカにいたので、2つの国を見る中で見えてきたものがあったので、自然と反映されているかもしれない」という。また、「自然は人間の力が及ばないもので、そこから学べるものはたくさんあると思う。映画できることの一つに言葉で言い表しきれないものとか、目に見えないものを表現できたら、映画だからできることだという気持ちがある」と語った。

一方で、本作に出演するにあたって福永監督の『アイヌモシリ』を鑑賞したという山田は「彼らがそこに生きていると感じました」といい、「(同作からは)目に見えないものを感じて、どうやったら私が『山女』の世界の中でそこに存在できるんだろう、あの空気感を出せるんだろうと感じて、そこは気にしながら現場にいました」と明かした。

また、「こういうことを受け取ってほしいとはあまり考えずに演じていたんですけど、今になって彼女の生き方が自分の役割とか育った環境から、自分の意志で幸せを得るために進んでいくという捉え方ができるんだなと感じていて、凛がたくましい女性だと思います」と語る山田。

さらに山田は「同世代が見ていただけたらうれしい。私自身は『さとり世代』と呼ばれる世代で、何かに期待したり、傷つかないように最初から自衛している部分が私個人としてはあると感じるときもある。彼女(凜)も生まれてきた環境が当たり前だと思って、でも自分らしくいられる場所を見つける。私自身も希望を持って考えたいなと思うことが日々あります。自分がここ以上にいたい場所ってなんだろうと考えるきっかけにもなったらうれしいと思います」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『山女』は2023年6月30日(金)よりユーロスペース、シネスイッチ銀座ほか全国で順次公開
監督:福永壮志
出演:山田杏奈、森山未來、二ノ宮隆太郎、三浦透子、山中崇、川瀬陽太、赤堀雅秋、白川和子、品川徹、でんでん、永瀬正敏
配給:アニモプロデュース
©YAMAONNA FILM COMMITTEE