SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023の特集「SKIPシティ同窓会」上映作品『Winny』のトークショーが7月20日(木)にSKIPシティ 映像ホールで行われ、松本優作監督が登壇した。

“若手映像クリエイターの登竜門”として、映画界の未来を担う新たな才能の発掘を目的に2004年より毎年開催されてきたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭。記念すべき第20回となる今回は、スクリーン上映とオンライン配信のハイブリッドで開催される。会期はスクリーン上映が7月15日(土)~23日(日)、オンライン配信が7月22日(土)~26日(水)に開催される。

本作『Winny』は、技術者の未来と権利を守るため、権力やメディアと戦った男たちの真実の物語。2002年、金子勇は簡単にファイルを共有できるソフト「Winny」を開発、公開をする。しかし、違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。

2017年に『Noise ノイズ』が本映画祭の長編コンペティション部門で上映されたことで「初めて撮った長編映画がこの映画祭で上映していただけたことが大きな励みになりましたし、いろいろなことを前に進むきっかけになった」と挨拶した松本監督。本映画祭については「応募して見つけてくださったのがこの映画祭だった(笑)」と笑いながら、「岸建太朗さんとか、小橋賢児さんとのつながりもあったので勝手に親近感がありました。参加する前から見に来ていたりした」と明かした。

同作では、『Winny』の撮影も担当している岸建太朗が撮影監督を務めているが、「一から映画作りを教えてもらいながら作った」と感謝の気持ちを口にした。一方で、同作は2019年に劇場公開されたが、「レイトショーで2週間の上映だったので宣伝も自分たちでやれる範囲でやるということで正直苦戦はしました」と難しさもあったといい、「作ることだけを考えていたので、もしかしたら作る以上に公開のほうが苦労はしたと思う」と吐露した。続けて、2022年に劇場公開された『ぜんぶ、ボクのせい』は「夢のような座組でできた」という。

そして、今回上映された『Winny』については、2018年に行われた「CAMPFIRE映画祭」の企画コンペに同作が出ており、「短編映画を作りましょうとなっていた」と語り、その過程で同映画祭がきっかけで松本監督に話があったという。しかし、制作段階では苦労があったようで「7年分の裁判資料は膨大で、印刷すると部屋の天井くらいになる(笑)」と明かし、「最初は7年間を描こうとしたんですけど連ドラになるなと」ということもあり、さらに「調べれば無罪になったことは分かるので、映画として何を表現するのかとなったときに、第一審で負けてしまったことを打ち出さないといけないと強く思った」と考えたという。

また、「僕自身がなかなか社会に溶け込めなかったタイプで、がんばってはいたけどレールから外れるとなかなか戻れない。自分のように、もしくはもっと大変な人はたくさんいると思うので、そういう人たちに届くような映画を作れればといいと思って。届いてほしい人に届いてほしい映画を撮りたいと思いながら作っています」と語った。

現在30歳の松本監督だが「20代は自分の中でがんばれたと思うので。SKIP(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭)で受賞できなかったことは悔しかったんですけど(笑)悔しさもありながら前に向かって進むことができたので、もう少し視野を広げて世界に届く作品作りをしていきたい」と意気込みを語った。

さらに、今後については「社会的な作品はライフワークとしてやっていきたい。一方で、そういう作品を作っていく環境を作ることも大切だと思うので、もっと自分の作品を人に知ってもらえる作品も作らないといけないと思っています。自分の中ではスピルバーグみたいに、『ジュラシック・パーク』も作るし、『シンドラーのリスト』も作る、そういうのが素晴らしいと思っているので、そういう人になりたい」と語った。

【写真・文/編集部】

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023
[スクリーン上映]7月15日(土)~7月23日(日)にSKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ホール、多目的ホール(埼玉県川口市)ほかで開催
[オンライン配信]7月22日(土)~7月26日(水)に配信
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