SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023の特集「SKIPシティ同窓会」上映作品『浅田家!』のトークショーが7月21日(金)にSKIPシティ 多目的ホールで行われ、中野量太監督が登壇した。
“若手映像クリエイターの登竜門”として、映画界の未来を担う新たな才能の発掘を目的に2004年より毎年開催されてきたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭。記念すべき第20回となる今回は、スクリーン上映とオンライン配信のハイブリッドで開催される。会期はスクリーン上映が7月15日(土)~23日(日)、オンライン配信が7月22日(土)~26日(水)に開催される。
2012年に本映画祭で『チチを撮りに』にて長編部門監督賞、SKIPシティアワードを受賞した中野量太監督による『浅田家!』。「一生にあと一枚しか、写真を撮れないとしたら?」彼が選んだのは、“家族”だった―。両親、兄と共にコスプレした家族写真を撮影した写真集「浅田家」で脚光を浴びた浅田政志は、プロの写真家となるが、写真を撮ることの意味を模索するうちに撮れなくなってしまう。そんな時、東日本大震災が発生する。
2012年に開催されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で『チチを撮りに』(2013年劇場公開)が監督賞とSKIPシティアワードを受賞した中野監督。今回、「SKIPシティ同窓会」という企画で自身の作品が上映されることに「また映画祭に戻ってきて自分の作品をやってもらえるのは一つの恩返しの気持ちがしてうれしいのと…」と話しつつも、今年は自身が国内コンペティションの審査委員長を務めていることから「今年は審査委員長で頭がいっぱいなんです(笑)みんなの作品を観て刺激をもらって。いろいろな面で充実している日々を送っています」と挨拶した。
『チチを撮りに』については「これがダメなら映画を辞めようかなというくらいのつもりで撮った」と振り返った一方で、劇場公開を行うという制度が当時の映画祭にあったことから「意地でも欲しくて、初日に応募した(笑)」と明かした。また、その結果受賞に至ったことから「映画監督ができるように動き出した」と本映画祭がきっかけになったという。
さらに、同作がきっかけで商業デビュー作となった『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)につながったといい、その際には「1本で終わらないためにはどうすればいいのかを考えた」という中野監督は「興行が当たらないと次はない。どうにかしてキャストを集めるしかない」という状況で「おもしろい本を書けば俳優だって待っている」と思いを込めて脚本を書いたという。
その後は、『長いお別れ』(2019)を経て、今回上映された『浅田家!』(2020)を監督した。『浅田家!』は海外での評価も高く、フランスでもヒットを記録したことで、今回本映画祭で来日している監督から中野監督に「家族で観て、本当に面白かった」と写真を求められたという。本作を含めてこれまでの作品が海外で高い評価を得ていることに、中野監督は「最初に『チチを撮りに』で海外のいろいろなところに行かせていただいて、言葉が違おうが国境がないのが映画だとつくづく思った。僕のテイストだからアート系ではないですけど、ちゃんと世界に伝わるものを作りたい。『浅田家!』もまさにそういった風に作ったつもりなので、結果がこうなったのはうれしい。そのきっかけはSKIPシティ」と自身の思いを語った。
今後については「そろそろやらなきゃと企画を動かしています」という中野監督は「海外との合作を経験してみたいというのがあって。あと、本当のゼロからをやりたい」と抱負を語った。
さらに、今回審査委員長を務めたことで「自主映画を撮っている時のことを思い出して。必死で作ってみんなが観たらどう思うんだろうとドキドキしながら作っていて。そのパッションは今でも忘れたくない。ずっと怖がっていたい」と語り、「参加している監督は怖いと思う。今の時点での評価が出てしまう。悔しい思いも必要で、それは映画を撮って映画祭に参加しないと経験できないこと。選ばれた時点で次に進むための権利を手に入れているから、褒められるか悔しい思いをするか、どっちでも次につながる」とノミネート作品の監督の気持ちを想像した。さらに「この映画祭を通してこういうところまで来れました。そういう自分として、ここに戻れたことがうれしいです。“みんながんばれ”という立場にいれたことがうれしい」とメッセージを送った。
【写真・文/編集部】
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023
[スクリーン上映]7月15日(土)~7月23日(日)にSKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ホール、多目的ホール(埼玉県川口市)ほかで開催
[オンライン配信]7月22日(土)~7月26日(水)に配信
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