『アリスとテレスのまぼろし工場』の公開記念舞台挨拶が9月16日(土)に新宿ピカデリーで行われ、榎木淳弥、上田麗奈、久野美咲、林遣都、瀬戸康史、岡田麿里監督が登壇した。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などの脚本を担当し、監督デビュー作となった『さよならの朝に約束の花をかざろう』で国内外から高い評価を得た岡田麿里監督最新作でMAPPA初のオリジナル劇場アニメーション。突然起こった製鉄所の爆発事故により全ての出口を失い、時まで止まってしまった町が舞台。いつか元に戻れるようにと、住民たちは何も変えてはいけないルールを作り、鬱屈とした日々を過ごしていた中で、中学三年生の正宗は気になる存在の謎めいた同級生の睦実に導かれ、製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れる。そこにはいたのは喋ることのできない、野生の狼のような少女―。2人の少女と正宗との出会いは、世界の均衡が崩れるはじまりだった…。主人公・菊入正宗役を榎木淳弥、正宗の同級生・佐上睦実役を上田麗奈、謎の少女・五実役を久野美咲が演じる。
本作について榎木は「時が止まってしまって、変わっちゃいけないという部分が設定としてはファンタジーですけど、現実世界でも変わっていこうとすることを抑えつけられることはあると思う。僕も悔しい思いをしてきたというか、もっと違うことをやりたいのに『同じようにしろ』というのは体験してきたので、そこは共感できました」と振り返り、自身が演じた正宗について「この世界のどこかいそうな人物像」と表現した。
上田は自身が演じた睦実について「私が14歳だったころと似ているかもと思いました。自分の本当の気持ちを周りに出せなかった。私の場合はそれで嫌われちゃうのが嫌で隠して。表に出せないウソつきになってしまうというどうしようもなさが、あの頃と似ていると思いながらやっていました」と共感していた様子だった一方で久野は「真っ白だった彼女の心にいろいろな色がポタポタとしずくが落ちるみたいににじんで入っていって、五実自身も変わっていくという表現を心掛けていた」と明かした。
本作が声優初挑戦となる瀬戸は「アニメが大好きなので、声優陣のみなさんがしゃべるたびにワクワクします。『あの声だ!』と」と笑いつつ、自身の起用については「ビックリしました。僕でいいのだろうかと。完成したものを見たんですけど、よく分からないです、自分の声がいいのか悪いのか、馴染んでいるのか」と謙遜しつつも、「どういう感想をみなさんが持たれるのか、ドキドキしながら今日を迎えています」と話し、会場から寄せられた拍手に笑顔を見せた。林は「岡田さんが書かれたセリフを発していく中で、終始自己犠牲の精神を感じて。自分を犠牲にして行動したところに魅力を感じました」とコメント。また、岡田監督は「一緒にキャラクターを生み出していただいたという感謝でいっぱいです」と語った。
変化を禁じられた町が舞台の本作では、一度描いた“将来の夢”を変えらることができないことにちなんで、自身の“将来の夢”を発表。榎木は「家族に囲まれて死ぬ」、上田は「猫ちゃんと一緒になるべくハッピーに暮らす」、久野は「毎日笑顔でのんびり暮らすこと」、瀬戸は「幸せに暮らす」と回答する中で、林は「リニア中央新幹線に乗りたい」と書き、会場の笑いを誘った。最後に発表した岡田監督は「何十年先もアニメを作っていたい」と書き、会場は拍手に包まれた。
最後に岡田監督は「生活の一部になっているというか、喜びも苦しみも全部『まぼろし工場』の中にある数年でした。今回だけでなく、一緒にやってきた人たちとまたみんなで新しい夢が見れたらと思います。そして、また皆さんに見ていただけくことができたらうれしいです」とメッセージを送った。
【写真・文/編集部】
『アリスとテレスのまぼろし工場』は全国で公開中
原作・脚本・監督:岡田麿里
出演:榎木淳弥、上田麗奈、久野美咲/八代拓、畠中祐、小林大紀、齋藤彩夏、河瀨茉希、藤井ゆきよ、佐藤せつじ/林遣都、瀬戸康史
配給:ワーナー・ブラザース映画、MAPPA
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