第36回東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門出品作品『年少日記』のQ&Aが10月28日(土)にヒューリックホール東京で行われ、ニック・チェク(監督/脚本/編集)、ロー・ジャンイップが登壇した。

中学校教師のチェンは教室で自殺をほのめかすメモを見つける。書いた生徒が誰かを捜索するうち、チェンの脳裏に自らの少年時代の記憶がよみがえる。ニック・チェクの鮮烈な監督デビュー作。

ニック監督は2019年に香港政府による初商業映画制作支援である第5回FFFIに選ばれ、デビュー作となる本作の制作資金を獲得し、第25回上海国際映画祭でアジア新人賞にノミネートされた。中学校教師のチェンは教室で遺書らしき手紙を見つける。書いた生徒が誰かを捜索するうち、チェンの脳裏に自らの少年時代の記憶がよみがえる。

本作の脚本も担当しているニック監督はストーリーについて、「ストーリーはフィクションですが、自身の経験からインスパイアされてこの物語を考えました」と語り、2009年に香港で映画の勉強をしている際に友人との間に起こった経験をもとに考えられたという。

本作のテーマ曲でもあり、作中で主人公が少年時代に弾いていた曲でもあるドビュッシーの『夢想』。数ある名曲からなぜこの曲を選んだ理由を聞かれると、「自身がいいと思っていても、映画音楽は物語の展開、人物にマッチングしなければならない」と語り、「癒しという効果だけでなく子どもにとってはプレッシャーを感じるのではないか」と考え選んだと明かした。

主演のローは本作で中学教師であり、コンプレックスを抱えている繊細な役を演じているが、自身の役柄について「脚本を読んだら前々から知っている友達みたいな存在でした」と明かし、「彼の語っていることは友人として語っているように感じた」また、撮影に入ってからは「演じるのではなく彼が隣にいるような感覚だった」とし、演じている時は「自分の理解では、色んな傷を負ってきた(主人公が)どう一歩踏み出すのかに焦点を当てて考えた」と語った。

また、今回の来日が13回目だという監督は「日本が大好きで、今日かけているメガネも日本で作りました」と明かすと会場からは笑い声が聞こえた。

【写真・文/編集部】

第36回東京国際映画祭は2023年10月23日(月)~11月1日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催