第36回東京国際映画祭 コンペティション部門出品作品『ペルシアン・バージョン』。
10月23日(月)~11月1日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区地区で開催される第36回東京国際映画祭。コンペティション部門は、2023年1月以降に完成した長編映画を対象に、114の国と地域から応募された1,942本の中から、厳正な審査を経た15本の作品が期間中に上映される。
イランからアメリカへ移住してきた大家族の母と娘の半生を描いた、笑いあり、涙ありのハートフルコメディ。主人公のレイラは、大家族の末っ子として母親の愛情を十分に感じることができずに育ったことなどが原因で、母親とは複雑な関係である。レイラはある出来事をきっかけに、壮絶な母親の過去を知ることになる。母と娘、二人のこれまでの人生を丁寧に描き、両国の緊張状態の中で移民としての立場で生きていく大変さや、ジェンダー等の現代社会の抱える様々な問題にも焦点を当てながら展開していく。
シンディ・ローパーの“Girls Just Want to Have Fun”のカバーに乗せてイラン人女性たちが踊るミュージカル調の演出が、アメリカらしさを表現すると同時にイスラム社会における女性の自由を訴えているようにも見え、この映画のメッセージを彩っている。自分の道を切り開く強さを持っている主人公と母親が、人生を思いっきり生きている様子が清々しく、視聴者を勇気づけてくれる。コメディータッチでありながらも、アメリカとイランの政治的立場、ジェンダー、移民問題等、現代社会で向き合っていかなければならない問題について改めて考えさせられる、非常に見ごたえのある作品である。
【文/編集部(E)】
第36回東京国際映画祭は2023年10月23日(月)~11月1日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催
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