本当の彼女を誰も知らない―杉咲花主演映画『市子』に各界の著名人からコメントが到着した。
本作は、監督の戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品でもあり、サンモールスタジオ選定賞2015では最優秀脚本賞を受賞した舞台「川辺市⼦のために」が原作。観客から熱い支持を受けて2度再演された⼈気の舞台を映画化。川辺市子(杉咲花)は、恋人の長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズを受けた翌日に、突然失踪。長谷川が行方を追い、これまで市子と関わりがあった人々から証言を得ていくと、彼女の底知れない人物像と、切なくも衝撃的な真実が次々と浮かび上がる…。
『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)で宮沢りえ演じる余命宣告を受けながらも持ち前の明るさと強さで気丈に振る舞う母・双葉の娘・安澄役を演じ、第40回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、新人俳優賞を受賞したほか、同年の映画賞を総なめし一気に注目を集めた杉咲花。その後も、『十二人の死にたい子どもたち』(2019)、『楽園』(2019)、『青くて痛くて脆い』(2020)など数々の映画に出演を続けてきたが、12月8日から公開される本作『市子』が意外にも映画単独初主演となる。本作以外にも、2023年だけでも『大名倒産』『法廷遊戯』と出演作が立て続けに公開され、12月15日(金)には『屋根裏のラジャー』(声の出演)が公開される。さらに来年も主演作『52ヘルツのクジラたち』『片思い世界』が控えるなど、その勢いはとどまるところを知らない。
そんな、名実ともに高く評価される俳優・杉咲花が今回演じたのは過酷な宿命に翻弄されるひとりの女性・川辺市子。「精根尽き果てるまで心血を注いだ」と、並々ならぬ気概で役と向き合ったことを明かしている。その熱量は確実にスクリーンに刻まれており、先月開催された釜山国際映画祭や東京国際映画祭での上映などで一足早く鑑賞した観客からは絶賛の声が相次いで上がっている。その勢いは一般の観客もさることながら、映画評論家陣や著名人たちにも及ぶ。今回、各界の著名人からコメントが続々と到着した。
トータス松本(ウルフルズ)
本当に悲しい人って、湿っぽいどころかカラッカラなんやなぁ。
市子もさることながら、長谷川。
夏の蒸し蒸し。
なのに湿気はなく、乾いて乾いてヒリヒリした。
佐久間宣行(テレビプロデューサー)
人にはそれぞれの地獄があり本当の闇も光も本人しかわからない。
その闇の濃さと合間からきらめく光の切なさ
すべてを内包した市子の笑顔が頭から離れない。
杉咲花さん、圧倒的でした。
立田敦子(映画ジャーナリスト)
この世界には、存在(イン)すら(ビジ)知られて(ブル)いない(・ピー)人間(プル)がどれほどいるのだろうか。
杉咲花によって体現された、絞り出すような川辺市子の魂の叫びを、
祈りを込めて、ひたすら受け止めた。
SYO(物書き)
市子を生き抜いた杉咲花と
市子に出会った我々観客と
市子の面影を宿す当事者が線で繋がる、という第一歩。
この先、独りにはさせない。
分断の暗闇を物語で照らす映画の責務を改めて想った。
森直人(映画評論家)
日本発、世界に届けたいストロングスタイルの名作。
存在と制度をめぐる重厚なミステリードラマ映画として『羅生門』があり、『砂の器』があり、『市子』がある。
戸田彬弘監督とそのチームに最大の敬意を!
北川れい子(映画評論家)
自分を消すこと。自分を捨てること。
それが「市子」に残された唯一の生きる道。
どうして?なぜ!
脚本も演出もキャスティングも全てが〈別格〉のヒューマンミステリーの秀作である。
中井圭(映画解説者)
圧巻の杉咲花。
幾重にも重ねた人物像の根底に心の軸を垣間見せる、
杉咲花の卓越した演技が物語を牽引し、真実の輪郭を捉えきれない観客を翻弄する。
ヤングケアラー問題や社会制度の隙間を横切りながら描くのは、
この苛烈な時代を生き抜くための、哀しくもしなやかな態度。
相田冬二(Bleu et Rose/映画批評家)
近くにいるのに、遠くに感じる。
遠くにいるのに、声も匂いも身近。
杉咲花が、言葉にできない笑みを浮かべる。
市子が、沈黙の叫びをあげる。
ふたりの女が通り過ぎ、残像がこびりつく。
忘れない。忘れられない。
宇野維正(映画ジャーナリスト)
もしかしたら、市子とあなたは街中ですれ違ったことがあるかもしれない。
あるいは、市子は学校やオフィスであなたの隣の席にいたかもしれない。
誰でもあって、誰でもない。
スクリーンの中でそんな市子を生き抜いてみせた、杉咲花の「優しさ」に震えた。
松崎健夫(映画評論家)
名前や肩書きは、必ずしもある人間の存在証明を示すものだとは限らない。
己が“誰か”であること、社会が認識することの意味を、市子の存在は我々に問いかけている。
―
轟夕起夫(映画評論家)
『市子』という極めてシンプルなタイトルに惹かれ、本篇を観てみたら、
とんでもなく厄介な〈市子的世界〉の迷宮譚が待っていた。
僕はまだそこから抜け出せられず、そして未だ「市子とは何なのか」をあれこれと考え続けている。
市山尚三(東京国際映画祭 プログラミング・ディレクター)
海外の映画祭関係者と話すと
「日本映画は身の回りの話で完結しているものが多く、社会が見えない」という声をよく聞く。
『市子』はそうではない日本映画が確実に存在することを示している。
杉咲花の抜群の演技は今年の様々な女優賞の最有力候補となることは間違いない。
ナム・ドンチョル(釜山国際映画祭 プログラム・ディレクター)
この映画は、まさに主人公の『市子』という存在そのものに関する映画だ。
私たちは市子の過去を辿ってゆくにつれ、その境遇を理解するだけでなく、
同時に、彼女を心から抱きしめてあげたい気持ちに駆られる。
太田千尋(テアトル新宿 営業)
“ぼく”や”あなた”はこんなにも不確かで危ういものなのか。
必死に“市子”にしがみつく彼女に対して、
“わたし”は感動して涙を流すと同時に“他者”であるという事実に安堵した。
小川賢人(アップリンク吉祥寺 支配人)
それぞれの記憶の中に生きる、断片的な市子とはいったい何者だったのか。
正解を探さずとも目の前にいる“市子”それだけで充分なのに「逃げてはいけいない」理由はなく、
その存在に片時も目が離せない。
塩谷洋介(シネ・リーブル梅田 営業)
劇中、市子は逃げ続ける。
突き抜けるほど青い空の下、その歩行はポツンとひとりで寄る辺ない。
我々は彼女を追うことしかできない、と同時に「私も確かにここにいる」という事を思い出させてくれる映画だった。
多田祥太郎 (シネ・リーブル神戸 支配人)
行き場のない感情、どうする事も出来ない現実の中でもがく市子の姿にどうしようもなく感情を揺さぶられました。
こんなにも胸が苦しくなった映画は他にありません!
今もどこかで生きているであろう市子の事をいつまでも忘れる事は出来ないでしょう。
稲垣明子(伏見ミリオン座 支配人)
俳優・杉咲花という存在を手がかりに、
タイトル『市子』の意味を考えながら、 じっくりと観て欲しい。
彼女は一体何者なんでしょうか。
『市子』は2023年12月8日(金)よりテアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国で公開
監督:戸田彬弘
出演:杉咲花、若葉竜也、森永悠希、倉悠貴、中田青渚、石川瑠華、大浦千佳、渡辺大知、宇野祥平、中村ゆり
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2023 映画「市子」製作委員会