伝説の名作がミュージカルとしてスクリーンによみがえる―『カラーパープル』で映画初主演を務めたファンテイジア・バリーノの魅力に迫る。

本作のオリジナルは、スティーブン・スピルバーグがピューリッツァー賞受賞の同名小説を原作に、『E.T.』 の後初めてシリアスな作品に挑んだ『カラーパープル』(1985)。アカデミー賞10部門にノミネートされた。そんな名作が38年の時を経て、ミュージカル映画としてスクリーンによみがえる。プロデューサーはスピルバーグをはじめ、オリジナル版で映画初出演にしてアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたオプラ・ウィンフリー、オリジナル版でアカデミー賞作曲賞と歌曲賞にノミネートされたクインシー・ジョーンズらが務め、新鋭ブリッツ・バザウーレ監督が、“希望”と“自己肯定感”を求める女性たちの姿をエモーショナルにとらえ、圧巻の歌声が観る者の心を奮い立たせる力強いミュージカルとなっている。

本作の主人公であるセリーは38年前公開のオリジナル版で初主演にしてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたウーピー・ゴールドバーグが演じた役柄。今回、ミュージカル映画となった『カラーパープル』で、セリー役を託されたのはR&Bシンガーで女優のファンテイジア・バリーノ。圧巻の演技が高く評価され、映画初主演にも関わらず、第81回ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされるなど、世界中から注目が集まっている。ファンテイジアは2004年、オーディション番組「アメリカン・アイドル」3rdシーズンに出場。音楽一家に育ったことで磨き上げられた抜群の歌唱力で、見事優勝をおさめる。デビューシングル「I Believe」はBillboard Hot 100で全米1位獲得の快挙を達成した。グラミー賞をはじめ、数多くのアワードでノミネートや受賞を果たし、スターへの階段を駆け上がった。2006年には自身の半生を綴った自伝小説「Life is not a fairytail」がドラマ化され、自ら主演&女優デビューを飾り高視聴率を叩き出した。

そして2007年、ファンテイジアは当時ブロードウェイで公演されていたミュージカル「カラーパープル」でセリー役を引き継ぐ。ヘビーな役柄だけに彼女の中で演技への挑戦は精神的に辛いものだった。当時を振り返ったインタビューでは「ブロードウェイでセリーを演じたときには、舞台を降りるたびに少し悲しい気持ちになり、へこんでいました」と語っている。複雑な思いを抱えながら演じていたファンテイジアだが、その歌声と演技は多くの人の心を掴み、当初2007年10月までと6か月限定の出演予定が翌年の1月までに延長された。ミュージカルの大ヒットを受け、ファンテイジアは同年のシアター・ワールド賞とベスト・リプレイスメント・スター・ブロードウェイ・ドットコム賞を受賞している。

ブロードウェイの歴史に残る女優となったファンテイジアが、今度はスクリーンでその輝きを放つ。本作のオファーを受けた当初は出演を断ることも考えたそうだが、ブリッツ・バザウーレ監督から主人公セリーの持つ想像力の表現や新たに加わった楽曲を聴き、即答でオファーを受けた。オリジナル版の映画や舞台版では沈黙の多かったセリーが、豊かな想像力を表現し、自分たちの強さに気づいていく。ミュージカル映画として生まれ変わった『カラーパープル』が描く囚われの身から解放される姿に心奪われたのだ。

ファンテイジアの起用についてバザウーレ監督は、「登場人物のエッセンスを体現できる人たちを探していました。彼女は生まれながらのファイターで、優れたアーティストで、彼女が生きる世界で真の巨匠になった人なのです。彼女の演技に、きっと誰もが圧倒されると私は確信しています」と賞賛している。

舞台版への出演から16年の時を経て再びセリーを演じることになったファンテイジアは「ミュージカル出演から、私はずっと年をとって、賢くなって、結婚して、子どもも増えたから、セリーに対して異なる視点で臨むことができた」と自身の成長が新たなセリー像を生んだ。『カラーパープル』の魅力について、「私たちはオリジナル版を変えたい訳ではありません。あの映画のスピリットが素晴らしいからです。ただ、若い世代と繋がりたいと私たちは思っています。歌やダンス、衣装やストーリーにところどころひねりを加えて完成した映画は、今の世代にフィットする作品になっています」と、原作から映画、舞台へと受け継がれたスピリットを継承し、さらなる高みを目指したと力強く語っている。エモーショナルな演技と圧巻の歌唱力、ファンテイジアの心震わせる熱演を映画館の大スクリーンで満喫していただきたい。

『カラーパープル』は2024年2月9日(金)より全国で公開
監督:ブリッツ・バザウレ
出演:ファンテイジア・バリーノ、タラジ・P・ヘンソン、ダニエル・ブルックス、コールマン・ドミンゴ、コーリー・ホーキンズ、H.E.R.、ハリー・ベイリー
配給:ワーナー・ブラザース映画 
© 2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.