『カムイのうた』の公開記念舞台挨拶が1月27日(土)にヒューマントラストシネマ渋谷で行われ、吉田美月喜、島田歌穂、菅原浩志監督が登壇した。
本作は、北海道の厳しくも豊かな自然と共存して生きてきたアイヌ民族で、その民族に伝わる叙事詩ユーカラを若干19歳という若さで見事な日本語に翻訳し、民族の文化を後世に残した実在の人物・知里幸恵をモデルとして描いた物語。北海道の先住民として独自の文化を築いてきたアイヌ民族は、和人(大和民族)によって差別と迫害の日々を余儀なくされる。同じ民族ではないという理由だけで―。主人公・北里テルを演じるのは吉田美月喜。テルに思いを寄せるアイヌの青年・一三四を望月歩、そしてテルの叔母・イヌイェマツを島田歌穂が演じる。さらにテルに自分の言葉でアイヌの文化を後世に残すことを勧めたアイヌ語研究第一人者の兼田教授を加藤雅也が、その妻を清水美砂といったベテラン俳優たちが演じ、本作に重厚感を与えている。
昨年11月より北海道での先行公開を経て、1月26日から全国で公開された本作。撮影では「私自身がアイヌ文化を詳しく知らないということに気づかされて。学んでいく中で、私自身ショックな内容でした」という吉田は「忘れてはいけないものだし、心にとどめておかなきゃいけないものだと思って、それを伝えたいと思って撮影していました」と撮影の日々を振り返った。
また、撮影にあたっては「(モデルとなった)知里幸恵さんも感じていた、文化を守らなければいけないという強さと悔しさ、燃える心の炎を絶やさないように」と臨んだという。
劇中ではユーカラを歌うシーンがある島田だが「私の人生にとっても大きな大きな挑戦となりました」といい、「民謡は歌わせていただいたことがあるんですけど、ユーカラは未知の世界で。譜面はないんです。ローマ字とカタカナで膨大な歌詞と、ユーカラの歌手の方が入れてくださった音源をいただいて。初めて聞いたときに難しすぎて、私これ歌えないかも、と愕然としました」と驚きを隠せない様子だった。
さらに「自分にしか分からない譜面を作って。北海道でご指導いただきながら必死でお稽古を重ねて撮影に臨ませていただきました」と明かした。また「大切な文化だと思いますし、私が歌わせていただいていいんだろうかと葛藤があった」と話しつつ、撮影では「経緯を込めながら精一杯歌わせていただきました」と心境を語った。
最後に吉田は「この映画を観て、いろいろなことを思った方がいらっしゃると思います。ただ私が一番伝えたくて参加させていただいたのは、当時の和人の方を批判していたり、そういう気持ちではなくて、ただ知らないことを知ろうとすること。知らないことは怖いと思うし、私自身も勇気を踏み出せないところがあるんですけど、理解が出来なくても歩み寄ろうとすることができていればこういうことは少なかったのかと思います。これからを生きる人として、頭の片隅にこういう事実があって、歩み寄る勇気を持って生きていけたらいいなと思います」、島田は「深いものが込められた映画です。お一人でも多くの方にご覧いただきたいと願っています」とメッセージを送った。
【写真・文/編集部】
『カムイのうた』は公開中
監督・脚本:菅原浩志
出演:吉田美月喜、望月歩、島田歌穂、清水美砂、加藤雅也
配給:トリプルアップ
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