せつなさが溢れる大人のラブストーリー『パスト ライブス/再会』に出演するユ・テオが、本作や演技について語っている。
本作は、移住によって離れ離れになった幼なじみの2人が24年後、36歳の夏にニューヨークで再会する7日間を描く大人のラブストーリー。物語のキーワードは「運命」の意味で使う韓国の言葉“縁—イニョン—”。見知らぬ人とすれ違ったときに、袖が偶然触れるのは、前世―PAST LIVES―で2人の間に“縁”があったから。いくつもの“もしも…”が観客の人生における“あの時”の選択に重なり、心の中に存在する“忘れられない恋”の記憶を揺り起こす―。本作で鮮烈な長編映画監督デビューを飾るのはセリーヌ・ソン。主人公・ノラ役にはグレタ・リー、幼なじみのヘソン役にはユ・テオ、夫・アーサー役にはジョン・マガロ。
セリーヌ・ソン監督がオーディションで見つけ出した、ヘソン役を演じるユ・テオ。韓国人の父と母を持ち、ドイツ・ケルンで生まれ育った彼は、4月に43歳を迎えるいわゆる遅咲きの俳優だ。とはいえ、少年のような初々しさをも感じる佇まいや表情で魅せる。
高校時代、膝の怪我でバスケットボール選手への道を絶たれたユ・テオが巡り合ったものこそ“演技”だった。高校卒業後、ニューヨーク、ロンドンで演技を学んだが、欧米ではそのルックスからアジア人の役しか回ってこなかったという。二度目の渡米時に一回り年上でカメラマンの妻と出会い、結婚後韓国に渡った。知名度が無い時期は、劇中4回しか登場しない悪役や主人公の親友として3話で亡くなる役など、メインとは言い難いキャラクターを演じてきたが、そんな時は自分の好きな俳優たちがどのようにキャリアを積んでいったのかを調べたという。
「ヒース·レジャーも、デンゼル·ワシントンも似たような役割を果たして、自分の色をはっきりと見せる時期がありました。 マシュー·マコノヒーは10年間ラブコメを中心に出演していたけど、『ダラス·バイヤーズクラブ』でドラマチックな役柄を演じアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で主演男優賞を獲った。そういった軌跡を見ながら、自分がどのような役割を果たさなければならないのか、グローバル市場ではどのように見えるのか考えるようになりました」と過去を振り返る。
15年の長い下積みの後、2017年『LETO』を引っ提げカンヌ国際映画祭のレッドカーペットに降り立ったユ・テオ。韓国系ロシア人であり旧ソ連の伝説的ロック歌手ビクトル・ツォイ役に、2000倍の競争率の中から選ばれた彼は、以降韓国でも活躍の場を広げていく。そんな中『パスト ライブス/再会』のシナリオと巡り合ったというが、その時のことを「最初に脚本を読んだ瞬間からすごく感動してしまい、泣き出してしまったんです。とても美しい映画だった」と語っている。
また、ドイツで幼少期を、欧米で青春を過ごしたユ・テオにとって、この映画の中で描かれている“イニョン=縁”という概念が強く心に響いた。「ソン監督が、この韓国ならではの文化を分かりやすく西洋の観客に紹介してくれたことが凄く嬉しかったし、幸運であるとすら思いました。日々の生活の中で、韓国では凄くカジュアルに使われているからです。物語の主題であるこの“イニョン=縁”という観念を学びながら、哲学や仏教思想などを自分の人生と関連付けて考えるようになったところが、この作品と出会った上で一番特別なことでした」。
これまでの生い立ちやキャリアを思い返した時にユ・テオがぶつかる壁は、アイデンティティの在り方である。そんな悩みにも、この作品との出会いで救われたそうで「韓国で生まれ育った俳優をキャスティングすることもできたはずなのに…。自分が韓国人だというアイデンティティを認められたようで胸がいっぱいでした。ニューヨークの真ん中で交通規制をして、あちこちに韓国語が書かれたタイトルがついていて、私の名前が書かれた椅子が置かれていて。 夢のような状況でした。」と喜びを噛みしめながら語る。本作で彼が演じたヘソンは、ソウルで生まれ育ち、兵役を経験した後大人になっても家族と同居しているという、劇中の言葉を借りると「韓国的な男らしさ」を持った人物だ。
ユ・テオが、ニューヨークに続き演技を学んだロンドン。結果発表を18日に控えた英国アカデミー賞には、非英語作品賞、脚本賞とともに、主演俳優賞としてユ・テオがノミネートされ、嬉しい帰還となった。また、前作がアメリカで大ヒットしたNetflixドラマ「ザ・リクルート2」の主演にも抜擢され、ますます注目度が上がっている今日この頃、「演じることは私の夢だったし、今でも夢なんです。私が演技を選んだのではなく、演技が私を選んだのだと感じています」と語る彼に、世界中の熱視線が注がれている。
『パスト ライブス/再会』は2024年4月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開
監督/脚本:セリーヌ・ソン
出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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