それは、何度でも復讐できるプログラム―『ペナルティループ』のアザーポスターが解禁された。
中村倫也主演『人数の町』(2020)で長編監督デビューを果たした荒木伸二監督が、主人公が意図せずループに巻き込まれる従来のタイムループものとは違い、“主人公が復讐のループを自ら選択する”という過去に類を見ない設定をオリジナル脚本で映画化。主演・若葉竜也が演じるのは、恋人を殺され、自らの手で犯人に復讐することを決意する青年・岩森。何度も復讐できるプログラム=“ペナルティループ”で復讐のループを否応なく繰り返す中で、変化していく岩森の心境を精細に表現。岩森に繰り返し復讐される男・溝口を伊勢谷友介が演じ、岩森の恋人・砂原唯を抜群な演技力を誇る山下リオがミステリアスな演技で魅せ、タイムループの謎を握るキーパーソンで『ドライブ・マイ・カー』のジン・デヨンが出演。奇想天外なアイディアに個性派キャストが集結し、従来のループものとは一線も二線も画す突然変異にして唯一無二の異色作となっている。
今回、本作『ペナルティループ』の世界観を切り取ったアザーポスター全10種が一挙解禁された。緑を基調にして新たにデザインされたアザーポスターには初解禁となる場面写真が使用されており、各キャラクターのセリフがコピーとして添えられている。岩森のポスターには、唯への「行ってきます」と、溝口に問いかけた「あんたさあ、やっぱあれなの、たくさん人殺したの?」という言葉が。唯のポスターの「手遅れ、知ってるでしょ」「質問禁止 あと、他言無用」は、恋人の岩森に向けた言葉だが、何が手遅れなのか、何が他言無用なのか、謎が残る。ファミレスで夜を明かす二人を捉えたモノクロの一枚には「ここ数年で一番、心地よい夜でした」と唯の心情が表されている。
溝口のポスターのコピーは「今日も俺を殺すのか?」。夕暮れに岩森とたたずむ一枚には「別の星にいるみたいじゃない?」と、復讐する者とされる者という関係性からはかけ離れたセリフが。ジン・デヨン演じる謎の男のポスターには、予告でも印象的だった「無理です。同意されてます」や、ペナルティループに契約した岩森への「サインをお願いします」というセリフが添えられている。
併せて各界の著名人からコメントが到着した。
宇野維正(映画ジャーナリスト)
反復するアクションとこぼれ落ちるユーモア
寄る辺なき登場人物たちの抵抗と達観
監督2作目にして荒木伸二は自分だけの「リズム」と「声」をものにした
倉本美津留(ポジティブ・クリエイター)
できることなら予備知識0で観るのがいい。どうしても予備知識が入ってしまった場合は、その予備知識を凌駕する映画だと言っておきたい映画だ。できればこのコメントも読まないでほしいが、私の鑑賞中の脳の動きだけを記しておく。「?」がいつの間にか「夢中」になり「?」で終わり、そしてもう一度頭から観たくなった。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
これはうまい!お見事だ!使い古された“タイムループ”物に、まだこんな余地があったとは!台詞を抑え、説明も排除した“映画言語”だけで疾走する前半、復讐の“ループ”の果てに、報復の連鎖が瓦解するプロットは素晴らしい。ペナルティを恐れ、過去の遺産を“ループ”するしか出来なくなった映画業界。“ループ”の外から現れた荒木伸二監督が、新たな“ループ”を次の世代に築いてくれる今後にも注目したい。
Chilla's Art (ホラーゲームクリエイター)
コンセプトや“水耕栽培”というロケーションがよかったと思います。
映画の主軸は「ループ」ということで、先入観として主人公だけがループするというものがありましたが、主人公だけでなく犯人もループしていると分かった時にびっくりしました。
また、ループするたびに主人公と犯人の関係が変わっていくのが面白いなと感じました。
中井圭(映画解説者)
ソーシャルメディアから戦争まで憎しみの連鎖が続く現代社会に、予想外の角度から一石を投じる。
映画史で繰り返し生まれ続けるタイムループ映画に、この時代ならではの、新たな視点が持ち込まれた。
長澤知之(シンガーソングライター)
異常事態なのに淡々と進んでいく不気味さ。何とも言えない密室感と匂いの無さ。それが最初自分と距離があるように感じていましたが、見進めていくとモヤが晴れ、ギュンと距離が近づきます。テーマは重いのに監督らしいユーモアの光る2作目の長編映画。映画が見せたいこと、そして問うてくることと会話できる作品でした。
バイク川崎バイク(芸人)
『何度繰り返しても復讐失敗』ではなく『何度繰り返しても復讐成功』という見たことないタイムループものを喰らわせられました…!ご馳走様でした。
とはいえシリアスに終始せず、あの二人の徐々に徐々に流動していく関係性がとにかく秀逸で。ラストの一言、好きです。B僕は K繰り返し Bぶっ殺すのみ。BKBヒィア。
松崎健夫(映画評論家)
ある殺人の顛末を繰り返し目撃することで、いつのまにか私たちは復讐の是非について考え始めている。そして、世界的にも量産傾向にあるタイムループものに対して「まだ、そういう手があったか!」と感嘆させられるのである。
森直人(映画評論家)
俗世間の敷地の片隅に、奇妙なシステムの映画を建設する稀代の変人監督、荒木伸二!我々に「仇討ち」は可能か?――との問い掛けの中で、情動的にしか生きられない人間という生きものの悲喜劇を差し出す。傑作。
門間雄介(ライター、編集者)
繰り返す私刑執行の日。
そこから復讐心とは異なる感情が湧きでてくる。
せつなさ…むなしさ…やるせなさ…。
悪夢みたいな現実から、逃れるために見る夢もまた、悪夢でしかないのか。
山内ケンジ(劇作家・映画監督)
毎日本当にお疲れさまです、と言いたくなるほどのループが実に面白いのだが、
なぜこうなのか、はネタバレになるので絶対に言えない。しかも、しかし、わかってくると権力対個人という不気味なカフカ的世界が待っていることなどネタバレになるので言えるわけがない。しかし、しかも観た人は必ずもう一回観たくなる。
若葉竜也(俳優)
超面白い映画だった!最高だった!なんか変だった!
『ペナルティループ』は2024年3月22日(金)より新宿武蔵野館ほか全国で公開
脚本・監督:荒木伸二
出演:若葉竜也、伊勢谷友介、山下リオ、ジン・デヨン
配給:キノフィルムズ
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