山田尚子監督によるオリジナル長編アニメーション映画『きみの色』の製作報告会が3月18日(月)に都内で行われ、鈴川紗由、髙石あかり、木戸大聖、川村元気プロデューサー、山田尚子監督が登壇した。

興行収入19億円の大ヒットとなり、社会現象を巻き起こした『映画けいおん!』(2011)、第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞のほか、2017年アヌシー国際アニメーション映画祭長編コンペティション部門に入選など高い評価を受け、興収23億円のヒットを記録した『映画 聲の形』(2016)と、京都アニメーションにて両作品の監督を務めた山田尚子の最新作であるオリジナル長編アニメーション映画『きみの色』。物語のテーマは山田監督が最も得意とする思春期の青春。少女たちそれぞれが向き合う自立、葛藤、恋の模様が、まるで絵画のような美しい映像で描かれる。

今回行われた製作報告会には、山田尚子監督をはじめ、企画から携わっている川村元気プロデューサー、そして本作で主人公3人の声を担当する鈴川紗由(日暮トツ子役)、髙石あかり(作永きみ役)、木戸大聖(影平ルイ役)が登壇した。

今回、8月30日に公開されることが発表された本作だが、プロデューサーを務める川村は「僕自身が山田尚子監督作品のファンだった」といい、海外でも話題となっていることを実感しているという。また、新海誠監督も気にしているということを聞いた山田監督は「光栄です」と恐縮し霧だった。また、川村プロデューサーは「210の国と地域の公開が予定されている。完成品をまだ見ていないところも多いと思う状態で、これだけのグローバルの制作が決まるのはジブリとか新海誠作品並み。ここまで期待されているんだと驚きました」と明かした。

1月に完成したという本作だが、その始まりについて「映画を作るところに憧れや尊敬があるので、川村プロデューサーと映画を作ることができるということだったので、一番大事なのが映画を見てくださった方の映画体験を大事にしたいと思って取り組みました」と振り返る山田監督は「劇場で見ていただけるための映画作りを大事に」と語った。

「オリジナル作品というところで、作品の世界とか大事な部分をスタッフの方と共有していくために、どういう言葉を使って、どういう目線でお話をしていこうか、そういうところな大変に思いました」という山田監督だが「すごいパワーで駆け抜けてくださったので苦労したかどうかは思い出せない」と振り返った。一方で川村プロデューサーは「ものすごい優れたスタッフが集まってくれた。山田さんと仕事をしてみたいと持っている人たちがいっぱいいたと感じた」といい、「間の感情がいっぱい映っていて、集中して映画館で見ないと見落としてしまう」と映画館での鑑賞を勧めた。また、山田監督は「音楽体験」に注目してほしいという。

さらにイベントには、本作で声優を務めた鈴川、髙石、木戸がキャラクターカラーにちなんだ衣装で登壇。1600人からオーディションで選ばれたそれぞれのキャスト陣について、山田監督がコメント。鈴川については「独り言がかわいかった」という山田監督は「自分の中だけですごく楽しんでいる、中の世界が幸福そうな子だと感じたので、“ひと耳ぼれ”」と称賛。髙石については「(オーディションが)午前中で早い時間だったのに2リットルの水を空の状態で持って来られて、すごい飲むんですねと不思議な魅力に虜になってしまった」と明かし、「耳にこびりついてしまうような不思議な音をされている。魅力を感じて」とオーディションを振り返った。また、木戸については「台詞だけではなくて、普段お話されるときのトーンとか色味がとても私が想像する影平ルイくんにピッタリ来た」と語った。

声を担当することが決まったことを事務所からサプライズで聞いたという鈴川は「頭が真っ白になって涙が止まりませんでした」といい、「声優のお仕事はずっとやりたい目標のひとつだったので結果が来るまでご飯がのどに通らないくらい緊張していたのでホッとしました」と安堵の表情を浮かべた。髙石は「受かるという想像もしていないうれしかった。ビックリしましたし、山田さんの作品がシーンを何回も繰り返して見るくらい好きで。出演させていただけることが本当にうれしくて頭が真っ白でした」と明かした。また、木戸も「アニメーションに声を入れるということはそのキャラクターに魂を宿らせることだと思うので、ルイくんという役を大丈夫かな自分というプレッシャーもあって、喜びと不安がありました」と明かした。

本作の魅力については「とても勇気をもらえる作品で共感できるところがたくさんありました」という鈴川、髙石は「映像美が本当にすごくて。線一つ一つにものすごいこだわりを感じる」といい「人がときめいた瞬間の描き方が魅力的でキラキラしている」、木戸は「3人の設定が思春期の子たちが持つ悩みだったりが誰しも経験があったり、いまそういう悩みに向き合っている子もいると思う。誰しもが共感できる作品」と語った。

劇中歌も魅力という本作だが「一番大事にしたのは3人が演奏している楽曲だと納得できること」といい、「ずっと小さい時から楽器をしてきた子たちではないので一生懸命練習したら弾けるもの」とこだわりを語った。歌は髙石がヴォーカルを担当し、鈴川がコーラスを担当しており、「歌詞がトツ子らしいチャーミングでかわいらしい言葉選び。つい口ずさんじゃうような中毒性がある」と話す鈴川。髙石は「チャーミングでポップで踊りだしたくなるような。でも劇中で流れた時に涙を流した。物語を経てたどり着いた曲が美しくて、体感していただきたい」と語った。

また、この日は登壇しなかったシスター日吉子役・新垣結衣からはコメントが到着。最後に山田監督は「オリジナル作品ですが、きっと見てくださった方の今までだった李、これからあることだったり、どこかに触れることができる映画なんじゃないかと思っています。劇場で見ていただく映画体験をしていただくということを大切に思って作った作品です。ぜひ劇場に足を運んでいただければと思います」と本作をアピールした。

『きみの色』は8月30日(金)より全国で公開。

【写真・文/編集部】

『きみの色』は2024年8月30日(金)より全国で公開
監督:山田尚子
©2024「きみの色」製作委員会