「そっと寄り添う物語を。それが必要になる瞬間まで」―2024年1月の直木賞選考会の夜に集まった3人の作家による能登半島地震支援企画「あえのがたり」が始まる。

同世代の作家3人による能登半島地震支援の企画が始動、2024年内に講談社から書籍として刊行される。2024年1月17日、『なれのはて』の直木賞選考会の夜、加藤シゲアキ、今村翔吾、小川哲の3人により立ち上がった本企画。同じ時代を生きてきた作家同士だからこそ、これまでに起きた災害や被災者の皆さんへの共通する思いもあった。

まず企画始動のお知らせとして「小説現代」5・6月号に掲載予定の3人による座談会が、本日4月20日(土)12時よりWeb「現代ビジネス」にて先行公開される。被災地の書店はいまだ復興半ばであることを鑑み、あらゆる環境にある方にも平等に読んでいただけるようにという考えから、Webでの先行公開を決定した。

企画名である「あえのがたり」は、能登地方に伝わる伝統儀礼「あえのこと」から発想した。能登地域の農家では「田の神様」を祀り、感謝をささげる儀礼を「あえのこと」と言い、「あえ=おもてなし」「こと=祭り」という意味を持つそう。被災地の方に寄り添う思いを、物語という「あえ=おもてなし」にのせて届けようという意図からできた。「現代ビジネス」と「小説現代」には地域の伝統文化に関する紹介も積極的に行っている、石川県の伝統老舗旅館「和倉温泉多田屋」様にご協力いただき「あえのこと」の写真も掲載している。

座談会にあるとおり、今後は加藤、今村、小川の3人を中心に、たくさんの作家に参加を呼びかけて、掌編小説を執筆してもらい、アンソロジーとして2024年内に書籍の刊行を目指す。

座談会では、「この段階では、小説には何もできないかもしれません。でも、いつか物語が必要になる瞬間が来ると思うのです。そのときに傷ついている人たちにそっと寄り添えたりできる力が物語にはあると思っていて。年明けからずっと『自分に何ができるだろう』と考えていました」(加藤)、「その忘却に対して何か小説家として抗えないかとも考えてしまいます。本というのはずっと残っていくものだし、だから短期的に注目を集めるというよりも(略)続けていくことが大事なんですよね」(小川)、「僕も、作家として震災に関わったことがないから、どうすればいいのか、っていうのは思うね。(略)残していかなければならないと。本は、何十年経っても読まれるもんだから、『記憶のしおり』としてはすごくいいもんやと思う」(今村)などと企画始動にあたっての、熱い想いを語っている。

刊行予定の書籍では、参加著者の印税相当額と講談社の売上を能登半島の復興支援に役立ててもらえるよう寄付する予定。また、本日より、 「あえのがたり」X公式アカウント(@aenogatari)が開設された。