『あんのこと』の完成披露上映会が5月8日(水)に都内で行われ、河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、入江悠監督が登壇した。

2020年6月、新聞に掲載された「ある1人の少女の壮絶な人生を綴った記事」。その1本の記事に着想を得て描いた人間ドラマ『あんのこと』。今注目の若手俳優・河合優実が機能不全の家庭に生まれ、虐待の末にドラッグに溺れる少女・杏を演じ、『SRサイタマノラッパー』や『ビジランテ』などで現代社会の問題にスポットライトを当ててきた入江悠監督がメガホンをとった衝撃作。主演は河合優実。本作では機能不全の家庭に生まれ、虐待の末にドラッグに溺れる少女・杏という難しい役どころに挑戦している。さらに佐藤二朗が杏を救済しようとする刑事・多々羅を、稲垣吾郎が正義感と友情に揺れるジャーナリスト・桐野を演じる。

コロナ禍で実際に起きた出来事を基にした本作だが、「実在する方のお話ということが最初から最後まで自分の中で大きくて。とても強い気持ちで大切に触らないとできないものだと思った」という河合は、実際に脚本を読んで「入江さんが同じ気持ちで覚悟しないとできないと思いながら書いた脚本だろうなという気みたいなものを受け取るものがあって」と振り返った。また、撮影では「本人に近づきながら、途中から“香川杏”という映画の中の一キャラクターとして作るという方向にシフトしていった」と明かした。

「言えないことが多い」という佐藤は「不遇の少女を救おうとする気持ちは本気だというのは終始一貫して頭に置いておいた」と自身の役について語った。本作の脚本を読んで「胸が張り裂けそうな思いで、衝撃ですよね」という稲垣は「撮影中はとにかく杏ちゃんの心の声を、心の叫びを届けたいという思いで演じていた」と振り返りつつ、「こいうことは起こりえること。明日何が起こるか分からない。急に絶望に陥ってしまうことは人間にはあるんじゃないかと思ってくださると思う。そんな時に救ってあげられる安心できる社会とか、声を聞いてあげられる、手を差し伸べてあげられるような世の中を作っていかなければいけないと感じました」と語った。

本作では脚本も務めた入江監督は「河合さんに委ねたところが大きい」といい、稲垣はそのことから「ドキュメンタリーのようで伝わった」と話した。河合自身は「私も自分がそこにいるということ以外のすべてを現場に委ねているような気持だった」と振り返った。また、佐藤と稲垣との共演について、河合は「こういう題材だから閉じすぎたり話さないようにしようということは全然なくて。和気あいあいと撮っていた記憶があった」と振り返りつつ、今回2人と会って「こんなに楽しく話してなかったなと思って」と明かし、佐藤も「今日会う河合優実がものすごく明るく見えたから、撮影現場ではしょってたんだなと吾郎ちゃんと話してた」とコメント。さらに、佐藤は稲垣についても「吾郎ちゃんもそうだよ。今日よりは暗い感じがした」と明かした。

本作に出演したことで「いろんな作品とか役がありますけど、これまでもこれからも特別な役だと思っているので、これを経験できたことはすごく大きかった」という河合は「いろんなことがこの先あるだろうけど、これをやったことが自分の糧になる。経験自体が支えになると思っています」と本作にかけた思いを語った。

また、作品の内容にちなんで“人生を変えた運命の出会い”を聞かれると、「ずっとやってきたメンバー、グループは解散していますけど、草彅(剛)さんや香取(慎吾)さんとはずっと一緒にやっているので、これはすごいことだなと。30年以上ですから。今は3人で新しい地図としてやっていて、ファンミーティングのツアー中なんですけど、来てくれるお客さんもデビュー当時から来てくれている方とか、親子3代で来てくれている、ありがたいと感じます」と感慨深げな様子だった。

【写真・文/編集部】

『あんのこと』は2024年6月7日(金)より新宿武蔵野館、丸の内TOEI、池袋シネマ・ロサほか全国で公開
監督・脚本:入江悠
出演:河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、河井青葉、広岡由里子、早見あかり
配給:キノフィルムズ
© 2023『あんのこと』製作委員会