倉敷美観地区を舞台に、地元高校生たちが花火の打ち上げに奔走する映画『蔵のある街』の製作が開始された。
山田洋次作品の多くで脚本、助監督を務めてきた平松恵美子監督が、地元である岡山県倉敷市を舞台に、倉敷出身のMEGUMI、前野朋哉ら豪華出演陣を迎えた映画『蔵のある街』。2020年から始まったコロナ禍では、悲しくつらい出来事も多くあったが、そんな状況下だからこそ、日本全国世界各地で上げられたサプライズ花火には、医療従事者をはじめとする エッセンシャルワーカーへの感謝の気持ちや、今は直接会えないけれど同じ花火を見上げて、必ず元気で再会しようという相⼿を思いやる気持ちが込められていた。 倉敷市でも楽しみにしていた⾏事を奪われた⼦どもたちのためにサプライズ花火が上げられた。花火を上げた有志の一⼈が、倉敷出身でこの映画の監督である平松恵美子の幼馴染みであったことから映画の着想を得て、『蔵のある街』のストーリーができあがっていった。
製作は、平松の同級⽣や知⼈たちが作った実⾏委員会。まる2年をかけて協賛⾦を募ったが、思うようには集まらず。一度は諦めようとしたが諦めきれず、試作品としてのパイロット版を撮影しYouTube公開したことが、企業版ふるさと納税対象事業として『蔵のある街』の選出へとつながった。倉敷市としては事業として映画を選出するのは初の試みである。倉敷市を⼀部だけ撮影に使った映画はいくつもあるが(『ALWAYS 三丁⽬の夕日』『るろうに剣⼼』『とんび』など)、全ての撮影を倉敷市でロケし、全国公開を⽬指す映画は初となる。
本作には、倉敷・岡山出⾝の俳優たちが平松の出演依頼を快諾し、実⼒と個性を兼ね備えたキャストが名前を揃えた。2010年バンクーバー五輪フィギュアスケートの銅メダリストであり、今もプロフィギュアスケーターとしてアイスショーなど常に新たな挑戦をし続ける高橋大輔〈倉敷市出⾝〉。今回は俳優に挑戦の幅を広げ、蒼たちの相談相⼿となる美術館の学芸員を演じる。もちろん本作が映画初出演となる。
女子高生・紅子の母親であり物語のキーパーソンでもある芸術家に、⼥優としても美容のカリスマとしても今もっとも注⽬を浴びているMEGUMI〈倉敷市出⾝〉。 紅子の自閉症スペクトラム障害の兄という難しい役どころには、『東京リベンジャーズ』のパーちん役として注目を集め、『世界は僕らに気づかない』では⾼崎映画祭で最優秀新進俳優賞を受賞し、今後の活躍が注⽬される若⼿俳優の堀家⼀希〈岡山県美作市出⾝〉。
高校生のたまり場ジャズ喫茶の、人の好いマスターには、喜劇からシリアスまで幅広い役をこなす実力派前野朋哉〈倉敷市出⾝〉。紅子を⾒守り、時に背中を押す美術教師として、『福⽥村事件』の瑛太の妻役で存在感を示し注⽬を浴びたミズモトカナコ〈倉敷市出⾝〉。他に櫻井健⼈、長尾卓磨、平松組常連メンバーとして田中壮太郎、陽⽉華、北⼭雅康などが出演。橋⽖功、林家正蔵の2人が作品に深い奥行きと広がりを与える。なお、オーディションで見事主役の座を勝ち取った男子高生<蒼>と女子高生<紅子>は7月に発表される。撮影は7月下旬から8月にかけて全編倉敷市内にて⾏われる。
高橋大輔 コメント
スケートを初めて30年という節目の年に、
また新たな挑戦をさせていただくことになりました。
競技人生を終えた後も、アイスショーをはじめ、様々なエンターテイメントに挑戦してきました。
今回は映画のお芝居ということで、不安も多々ありますが、新しい自分を発見できるチャンスと捉え、出演させていただくことを決意しました。そしてなにより、僕のルーツである「倉敷」が舞台ということで、とてもご縁を感じております。
平松監督をはじめ、スタッフの皆様、出演者の皆様からお力添えをいただきながら、ご覧いただく皆様の活力となる作品を目指してまいります。
MEGUMI コメント
私の大切な故郷、岡山での映画作品に参加させて頂ける事に心踊っています。特別な想いを馳せながら、撮影を楽しみたいと思っています。
前野朋哉 コメント
読み終えたあと、とても清々しい気持ちになる脚本でした。故郷、倉敷の街並みを思い浮かべながら読み進める物語。登場人物の想いに心を馳せながら、ページを捲るのが楽しかったです。
僕もかつてこの物語に出てくる高校生たちと同じく、高校生という厄介な時期を倉敷で過ごしました。目の前の現実から逃げ出して、学校をサボって大原美術館に行ったこともありました。今から思うとずいぶん贅沢な逃避行だな、とも思いますが、そんな貴重な街並みや文化に囲まれて過ごせたことに今は感謝しています。
これから映像化するにあたり、主人公たち高校生があの街を走り、語り、悩み、心を振るわせるのが楽しみでなりません。きっと、素敵な作品になると思います。僕も「希望」を持って取り組みたいと思います。
林家正蔵 コメント
平松監督の脚本を幾度も読み返しています。
そのたび どの登場人物に対しても 冷静でいながらも どこまでも優しい視線で描き出す。言葉の ひとつ ひとつに 心ときめきます。
東京の下町に生れ育った私は 豊かな自然に恵まれた岡山、倉敷には落語の公演で 何度も伺いながらゆっくりと街を巡ることがなかったのですが 台本を読み返すたび倉敷のすばらしさに ふれた気持ちになります。
しっかりと地に足をつけた芝居でお役を務めたいと決心するとともに 岡山のそして倉敷の魅力をじっくりと肌で感じてみたいと思うばかりです。
「蔵のある街」。 御期待下さい。
橋爪功 コメント
平松恵美子監督の言葉
故郷である倉敷で映画を撮るということは、最⾼に嬉しいことであり、一方いい年して苦悩しもがく姿を故郷の⼈びとに全方位的に見られてしまう、それはそれは最⾼に恥ずかしいことでもあります。でも、故郷と故郷に暮らす⼈びとにはいつまでも元気でいてほしい。美しい街並み、豊かな自然、奥深い文化を、誇らしく大切に思うのはもちろんだけれど、同時に、大好きな映画の道に進むことができたのは、この街が私を育ててくれたから。この映画に集ってくれた素晴らしいキャストの皆さんと、何度でも観たくなる倉敷発の映画『蔵のある街』を、この夏、精一杯の努力と汗と恥をかきながら作るのだと、わくわくする思いでいっぱいです。
ストーリー
倉敷に住む男子高生・難波蒼はある⽇、幼馴染みの女子高生・⽩神紅⼦の⾃閉症スペクトラム障害の兄が、神社の大木に登って大騒ぎを起こしていたところへ行き合わせる。紅⼦の兄は幻の花火を見て騒いでいたのだ。蒼は「俺が本物の花火を打ち上げてやるから降りてこい!」と⾔って騒動をおさめた。しかし、紅⼦は感謝するどころか涙を流しながら怒る。「自閉症」の兄だから、できもしない約束でごまかした。兄は約束を忘れないから、毎⽇傷つく」。蒼は、真実を突かれてショックを受ける。紅子に密かな思いを寄せていた蒼は、約束を守って花火を上げようとするが、どうしたらいいのかわからない。 実は紅子にとって「花火」は特別な意味があった。蒼が⾃分たちのために奮闘し始めた姿に、頑なになっていた紅子の心が次第に開かれていく。 軽⼝が本気になり、本気が苦い挫折を⽣み出し、挫折の中で再び立ち上がる。そんな蒼たちの奔走が徐々に周囲の⼈びとに伝わるが……。果たして、この街に花火は上がるのか?
『蔵のある街』は2025年夏に公開
脚本・監督:平松恵美子
出演:MEGUMI、前野朋哉、高橋大輔、林家正蔵、橋爪功 ほか
© 2022 映画『蔵のある街』制作委員会