鬼才ティム・バートン監督の誕生日を記念して週末は製作総指揮・監督を務めたNetflixシリーズ『ウェンズデー』を一気見するのはいかが?

本作はコミックから派生し映画やアニメ化などされてきた世界的人気作品「アダムス・ファミリー」の長女ウェンズデー・アダムスを主人公とした推理ミステリー。

不幸なことや邪悪なことが大好きなアダムス家でも一際目立つ冷酷さを持っているウェンズデー。問題ばかりを起こし学校を転々としているが母モーティシアと父ゴメスの母校である寄宿学校ネヴァーモア学園へ入学することに。この学校には人狼や吸血鬼など世間から邪険にされているはみだし者たちが在籍している。そんなある日、得体のしれないモンスターによる殺人事件が始まった。ウェンズデーは事件の真相を追うなかで、学園の秘密とアダムス一族の過去が関わっていることが判明した―。

鬼才ティム・バートン監督らしいダークファンタジー

ディズニーのアニメーターとしての経歴を持ち、白黒の人形アニメーション映画『ヴィンセント』(1982)で初監督。その後人気アメリカン・コミックの実写化映画『バットマン』(1989)の監督に抜擢されメガヒットを飾っている。そして今回ティム・バートン監督初のドラマシリーズとなる本作は配信後わずか4週間で当時のNetflixの歴代人気シリーズ(英語)史上2番目となる累計視聴時間を記録し日本でも大ブームとなった。バートン監督は『シザーハンズ』(1990)や『チャーリーとチョコレート工場』(2005)など名作を生み出し、ダークな中にもファンタジー要素を含んだ不思議な世界観を描くのを特徴としている。

本作についてバートン監督は「彼女は典型的なはみ出し者だ。白か黒で物事を判断する。主に黒だ」と解説しており、ウェンズデーの人生観はそのままにして、ティーンエイジャーになりどのように成長していくかを描いている。そのため、ミステリー要素だけでなく普通の思春期のような、自分と母親を比べてしまう娘の様子や、対立するもどこか理解し合うことができる友人との人間関係も描かれており青春時代に感じていたもどかしさを思い出す。

また、物語の謎であり1話目から観客に恐怖を抱かせたモンスターはバートン監督らしい小さな顔に大きな丸い目を特徴とし、彼のイラストを彷彿とさせファンにはたまらないテイストとなっている。そして、本作だけでなく9月27日(金)より公開される『ビートルジュース ビートルジュース』に先駆け35年ぶりにバートン監督の日本デビュー作でありティム・バートンワールドを世に知らしめた原点でもある映画『ビートルジュース』(1988)が8月23日(金)よりドルビーシネマ復活上映される。

ウェンズデーを取り巻く魅力たっぷりのキャスト陣

本作にはウェンズデーの”右手”となり事件を追う、意思を持つ手“ハンド”や父ゴメスの弟でウェンズデーも心を許す存在である叔父フェスターなど、映画『アダムス・ファミリー』でお馴染みのキャラクターも登場する。

また本作のオリジナルキャラクターでウェンズデーのルームメイトである人狼のイーニッド・シンクレア役はNetflixシリーズ『自由研究には向かない殺人』で注目を集めているエマ・マイヤーズが演じている。イーニッドはウェンズデーとは真逆の可愛くて派手なもの好き。ピンクとブルーのインナーカラーがチャームポイントで人懐っこい性格をしている。ただ人狼でありながらも爪しか変身できないことにコンプレックスを抱えている。真ん中でくっきりと分かれている寮の部屋は2人の真逆な性格を表現しており、そんな2人が物語が進むにつれて少しずつ距離を縮めていくところも見どころ。そして映画『アダムス・ファミリー』でウェンズデーを演じ、絶大な人気を得たクリスティーナ・リッチが寮母役で出演している。

ティーンになったウェンズデーは一層ダークに!?

弟パグズリーをいじめていた生徒たちがいるプールに強烈な目力で「弟をいじめていいのは私だけ」とピラニアを放つウェンズデーからは、弟思い(?)は健在だがティーンになり冷酷でより一層危険が増した様子がうかがえる。本作のカギとなるウェンズデーの特殊能力は人や物に触れると暗い過去や未来が見えるものだが、力をコントロールできずにいる。

そんな主人公ウェンズデー・アダムスに抜擢されたジェナ・オルテガはまさにハマり役。ショーランナーのマイルズ・ミラーも「ジェナを見てすぐ決めた」と明かしている。堂々と真っ直ぐ前を見て歩く姿やフェンシングやチェロを奏でる姿は圧倒的なカリスマ性を持つウェンズデーらしさを表現している。かわいらしい顔立ちのオルテガだがダークで謎めいた魅力を出しており、その代表的なシーンとなったのは自ら振り付けをした“ウェンズデー・ダンス”。個性を爆発させたような不気味なダンスは瞬く間に世界中で話題となりオルテガの人気の火付けともなった。また、オルテガはバートン監督の最新作『ビートルジュース ビートルジュース』にも出演している。本作ではアダムス家の無慈悲な少女を演じているが、『ビートルジュース ビートルジュース』ではハロウィンの夜に死者の世界に囚われてしまうリディアの1人娘・アストリッドを演じておりそちらも注目だ。

ドラマ『ウェンズデー』ファッションの魅力

原作である「アダムス・ファミリー」から表現されている黒髪に三つ編み、襟のついた黒のワンピースは本作でもウェンズデーの象徴となっているが、ティーンになり洋服のバリエーションも豊かになった。印象的な1話目の初めのシーンでは映画『アダムス・ファミリー2』の白の襟付きワンピースに似ているものを着用しており、ウェンズデーらしさを表現している。それに加えて、少しボーイッシュなストライプのトップスやブロックチェックの近代的なファッションも取り入れ、母モーティシアの趣味ではなくウェンズデー自身の個性を取り入れたファッションだと感じられる。また、学園のダンスパーティーでは、みんなが白をドレスコードとしてるなか一際目立つゴシック調の黒レースのドレスで現れ同級生の目を奪っていた。

対照的にウェンズデーの宿敵でセイレーンのビアンカはウロコをモチーフにしたような光沢のある妖艶な姿も魅力的だった。他にも制服は他の生徒が着ている青紫に黒のストライプではなく、1人だけグレーに黒のストライプでスカートの丈も長めのものを着用しており、足元はゴツメの厚底革靴でハンドが隠れているリュックはイギリスの伝統的なスクールバッグというゴシックテイストとヴィンテージ感を掛け合わせたようなファッション。思わず真似をしたくなってしまうものばかりとなっている。

そして、今年5月には本作のシーズン2の撮影がアイルランドで開始されたことが発表され、新キャストも解禁されている。注目ポイントは映画『アダムス・ファミリー』でウェンズデーの叔父フェスター・アダムスを演じていたクリストファー・ロイドの出演だ。果たして彼はどんな役を演じるのか。また、ウェンズデーのダークな魅力や奇怪なミステリーに加えて、彼女に初めてできた友人との絆や“ウェンズデーらしい”初恋などストーリーにも期待が高まる。

【文/片岡由布子】

Netflixシリーズ『ウェンズデー』シーズン1は独占配信中、シーズン2は近日独占配信
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