丸山隆平主演のヒューマンサスペンス映画『金子差入店』が2025年に公開されることが決定した。

「差入屋」という仕事がある―。刑務所や拘置所に収容された人への差入には、厳しい審査や検閲がある。差入と聞いて、私たちが頭に思い浮かべる物のほとんどは許可されないだろう。そこで登場するのがルールを熟知した差入屋だ。また、様々な事情から面会に行くことができない人たちに代わって、面会室へ出向くこともある。そんな差入店を営む家族の絆を描く映画が誕生した。

差入店の店主を務める主人公・金子には、『泥棒役者』以来8年ぶりの主役を演じる丸山隆平。近年では、2022年にジョン・キャメロン・ミッチェル演出の伝説のブロードウェイミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」や、三浦大輔(作・演出)「ハザカイキ」(2024)で主演を果たし、高く評価された。人に言えない過去を抱え、息子のために生き直そうとする男を、これまでの丸山のイメージとは一線を画す迫真の演技で情感豊かに体現した。

金子の妻の美和子には、2013年の日本アカデミー賞で、『そして父になる』で助演女優賞、『さよなら渓谷』で主演女優賞をW受賞し、今泉力哉監督とタッグを組んだ『アンダーカレント』(2023)の名演も記憶に新しい真木よう子。確かな演技力で、世の中の価値観に惑わされず自らの信念を静かに貫く美和子を芯に強さのある柔らかさで表現した。二人の息子の和真には、NHK大河ドラマ「光る君へ」に藤原道長の長男役で出演するなど、今最も注目される子役の一人、三浦綺羅。3人と一緒に暮らす金子の叔父の星田には、日本のエンターテインメント界の重鎮・寺尾聰。2016年に主演を務めたドラマ「仰げば尊し」の現場で制作スタッフだった古川豪の才能にふれ本作への出演を決めた。本作では要所要所で家族を支える星田を飄々とした優しさで演じている。

監督は古川豪。本作で長編初監督を務め、新たな才能でオリジナル脚本も自ら手掛けている。金子が罪を犯した人々やその家族と対峙する時、胸を締め付けるドラマがあり、不運な事件があり、未解決の謎がある。誰も観たことのない設定で、人間の可笑しさと切なさ、ダークサイドから希望に満ちた光までを追いかける感涙のヒューマンサスペンス。

丸山隆平 コメント

僕が演じた金子は、真っ直ぐな男です。それゆえに、自分で制御できない危うさも抱えています。家族に対する愛情はとてつもなく大きくて、差入屋という自分の職業と家族の間で揺れながら生きている人間です。古川監督とはクランクイン前に何度もお会いして、生い立ちなど個人的な話もたくさんさせていただき、互いの人間性を深く知った上での撮影となりました。監督の中に眠るマグマのような熱量を受け止めて、嘘なく演じることができたのではないかと思います。登場するすべての人たちとの人間関係を、どんどん掘り下げていく物語なので、自分自身がこれまで歩んできた人生を見つめ直すという貴重な作品にもなりました。ひと言で言えばいくつもの家族の物語なのですが、ひと言では簡単に言えない愛おしさや怒り、苦しさや喜びなどの想いが詰まっています。その中から宝探しをするような気持ちで観に来ていただければ、きっと何か大切なものを見つけてもらえるのではないかと思っています。

古川豪(監督)コメント

助監督として参加する撮影の最中、拘置所の近くでポツリと構える差入店に目が留まりました。調べるうち、差入れ代行業の必要性を知るに至りました。昨今のセカンドチャンスに寛容になれない世間の風潮に一石投じられるのでは?とも思ったのですが、なかなか納得いくものが書けず、時間は過ぎていきました。11年。その間私自身結婚し、子を授かり、変わっていく価値観とともにストーリーも変化していきました。
差入店やそれにまつわる人々を通して、家族とは?血とは?家庭環境とは?を問うています。
丸山隆平さんをはじめ素晴らしい俳優陣や愛すべきスタッフたちとともに作りあげました。どうか一人でも多くの方に観ていただけますように。

ストーリー

刑務所や拘置所に収容された人への差入を代行する「差入屋」。 金子真司は一家で「差入店」を営んでいた。ある日、息子の幼馴染の女の子が殺害される凄惨な事件が発生。彼女の死にショックを受ける一家だったが、犯人の母親が差入をしたいと尋ねてくる。 差入屋として犯人と向き合いながらも、日に日に疑問と怒りが募る金子。 そんな時、毎日のように拘置所を訪れる女子高生と出会う。 彼女はなぜか自分の母親を殺した男との面会を求めていた。2つの事件の謎と向き合ううちに、金子の過去が周囲に露となり、 家族の絆を揺るがしていく―。

『金子差入店』は2025年に全国で公開
監督・脚本:古川豪
出演:丸山隆平
 真木よう子/三浦綺羅
 寺尾聰