Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』は美味しそうな料理の数々に食欲が湧いてくる物語だ。

中学校を卒業した16歳のキヨと幼馴染のすみれは舞妓に憧れて青森から京都へやってきた。季節は夏になり、すみれは京舞がどんどん上達し、100人に1人の逸材と言われていた。一方、キヨは舞妓には向いていないと"おとめ"を言い渡されてしまう。青森に帰ろうとしたところ、まかないさんの幸子が腰を痛めたことから屋形(宿舎)でご飯を作ることに。これがきっかけとなり、料理を作ることが好きだったキヨは一人前の”まかないさん”を目指して日々奮闘していく。

本作は第65回小学館漫画賞少年向け部門を受賞した小山愛子によるベストセラーコミックが原作となっている。また、是枝裕和がショーランナーとして総合演出を担い、企画には数々の映画をヒットに導いた川村元気、各話の演出を是枝のほかに次世代の若手監督が行った。

主人公のおっとりとして温かみのある女の子キヨを演じたのは、Netflix映画『パレード』でこの世に未練がある女子高生役でも話題となった森七菜。キヨの幼馴染で100年に1人の逸材と言われている舞妓を目指しているすみれ(百はな)には、現在公開中の『赤羽骨子のボディガード』でヒロイン・赤羽骨子役を演じていることで話題の出口夏希。また、京都の芸妓でNo.1を誇り、すみれの憧れでもある百子には橋本愛、出戻りの芸妓・吉乃は松岡茉優など次世代を担う俳優陣から松坂慶子や常盤貴子などの豪華俳優陣が出演している。

本作の魅力はなんといっても主人公キヨが作るまかないだ。映画『かもめ食堂』や『深夜食堂』などの作品でフードスタイリストを務めている飯島奈美が監修しており、ナスの煮浸しや親子丼、一口サンドなど毎話おいしそうな料理がたくさん登場しとてもお腹が空いてくる。作中はもちろん、オープニングにも回ごとにポイントとなる献立が出てくるのでぜひスキップせずに観てほしい。

そして、セットとは思えないほど豪華でリアルな作りの屋形が物語の主な舞台となっており、花街で暮らす人々の血縁関係がなくともひとつの家族のように昔ながらの繋がりを大切にしている様子が描かれている。また、5話で京都No.1の芸妓である百子が舞う「黒髪」のシーンは、夜の暗闇の中に照らされる紅葉を背景にした船上の舞台セットが印象的だ。そこへ橋本愛演じる百子の京舞が加わり、幻想的な美しさを表現している。

主演の森七菜をはじめ自然体に演技をする俳優が揃っており、気張らずに温かい気持ちで観ることができる。毎日、屋形のお母さんやお姉さんたちに見守られながらキヨとすみれが二人で切磋琢磨していく日々は観ている人へ初心を思い出させてくれるような作品となっている。

【文/片岡由布子】

Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』は世界独占配信中
監督:是枝裕和、津野愛、奥山大史、佐藤快磨
出演:森七菜、出口夏希
 蒔田彩珠、城桧吏、福地桃子、若柳琴子、南琴奈
 リリー・フランキー、北村有起哉、尾美としのり、古舘寛治、戸田恵子、白石加代子/松坂慶子
 橋本愛、松岡茉優、井浦新、常盤貴子
©小山愛子・小学館/STORY inc.