『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の完成披露上映会が9月5日(木)に新宿ピカデリーで行われ、吉沢亮、忍足亜希子、呉美保監督が登壇した。

呉美保監督が9年ぶりの長編作品のテーマに選んだのは、コーダ(Children of Deaf Adults/きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子供という意味)という生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動をする作家・エッセイストの五十嵐大による自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」。脚本を担当したのは港岳彦。主演を務めるのは『キングダム』シリーズ、『東京リベンジャーズ』シリーズ等の話題作から、作家性の強い監督作等、幅広い作品に出演し、2025年には吉田修一原作、李相日監督『国宝』の公開が控える吉沢亮。本作では、耳のきこえない両親の元で育った息子・五十嵐大の心の軌跡を体現する。

先日行われた上海国際映画祭に続き、バンクーバー国際映画祭やロンドン映画祭への出品が決定している本作だが、世界の観客に本作を届けられることを「光栄な限り」と話す吉沢は「国とか文化を問わず、見ていただいた方に伝わる普遍的なテーマなんだと改めて思いました。これからもっと多くの方にこの作品が広がってくれるとうれしい」とコメント、忍足は「たくさんの人たちに見ていただけたら。どう感じていただけるかを考えながら見ていただければと思いました」と語った。上海国際映画祭では観客とともに鑑賞した呉監督は「こんなにうれしいことはない。公開を待たずに朗報を立て続けにいただけたのはただうれしい」と喜びをかみしめた。

そんな本作への出演について、吉沢は「いつかご一緒出来たらうれしいと思っていた監督だった」と明かし、最初は台本になる前のプロットをいただいて。描かれえている普遍的なテーマというか、家族の関係性、親子の愛情の変化も共感できる部分が多かった」と振り返った。

母親役の忍足は「この監督のもとで演じたい、一つの作品を作りたいと強く思いました」と出演への思いを明かし、その呉監督は「毎日育児と向き合いつつ、いつか映画をまた撮れたらと思い」と振り返り、その中で吉沢について「すごくすてきだと思った。美しい人なんですけど、その中にある美しくないない何かをこの目で見たくて。彼とこの企画は相性がいいんじゃないかとオファーしました」と明かした。また、忍足については「一度お会いさせていただいて、あるシーンをやっていただきました。それを見た時に、この方でやっていただきたいと心から思いました」と称賛した。

劇中では母子役を演じた忍足と吉沢。「忍足さんと(父親役の)今井(彰人)さんの手話はものすごくすんなり入ってくるんです。分かりやすくやってくださるのはもちろんだとは思うんですけど、何を言ってるか分かる。僕は勝手に愛情を感じていて、本当に温かいご両親だと思いました」という吉沢。一方で、自身は娘がいるという忍足は「(劇中で)息子を持つのはドキドキワクワクな感じで。吉沢さんは本当に素晴らしい息子で。手話も自然に少しずつ習得されて、息子としての手話表現を見て感動していました」と語った。

最後に忍足は「この映画はこれまでにない新しい感覚の映画だと思います。いろんな世界、家族の形がそもそもたくさんあるわけですが、いろいろな世界があって、たくさんの人たちが感じていただいてどう受け止めるのかを楽しみにしています」、吉沢は「この作品に参加させていただいて、改めて言葉を伝える重要性と言いますか、ただ日常を生きていてただ言葉を吐き捨てる瞬間だったり、あえて壁を作って自分の思いを伝える作業をやらない手段を取ってしまうことがあると思うんですけど、手話と出会って、やっぱり気持ちは伝えきゃ伝わらないし、手話という自分の思っているすべてを伝えてくれる言語は愛にあふれていて素晴らしい世界だと思いました。伝えるって大事だなと感じていただけることがあれば僕は幸せです」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は2024年9月20日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国で公開
監督:呉美保
出演:吉沢亮、忍足亜希子 今井彰人 ユースケ・サンタマリア 烏丸せつこ でんでん
配給:ギャガ
©五十嵐大/幻冬舎 ©2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会