『金子差入店』が第29回釜山国際映画祭に出品され、10月3日にワールドプレミア上映が行われ、丸山隆平と古川豪監督が登壇した。

「差入屋」という仕事がある―。刑務所や拘置所に収容された人への差入には、厳しい審査や検閲がある。差入と聞いて、私たちが頭に思い浮かべる物のほとんどは許可されないだろう。そこで登場するのがルールを熟知した差入屋だ。また、様々な事情から面会に行くことができない人たちに代わって、面会室へ出向くこともある。そんな差入店を営む家族の絆を描く映画が誕生した。差入店の店主を務める主人公・金子には、『泥棒役者』以来8年ぶりの主役を演じる丸山隆平。金子の妻の美和子には真木よう子。2人の息子の和真には三浦綺羅。3人と一緒に暮らす金子の叔父の星田には寺尾聰。監督は、本作で長編初監督を務め、新たな才能でオリジナル脚本も自ら手掛けている古川豪。

今回、本作が10月2日(水)~11日(金)に韓国・釜山で開催中の第29回釜山国際映画祭においてコンペティション部門<NEW CURRENTS(ニューカレンツ)>部門へ出品され、10月3日(木)に行われたワールドプレミア上映に、主演・丸山隆平と古川豪監督が登壇した。シックな黒のスーツに身を包み、上映前の舞台挨拶に登壇した丸山と古川監督。会場には注目を集める本作をいち早く鑑賞するために集まった映画ファンや世界各地のメディア、そして丸山の晴れ舞台を一目見ようと現地のみならず、日本のファンも多く詰めかけ、本作のプロデューサー稲葉尚人も含めた3人が登場するやいなや大きな歓声が巻き起こり、熱気に包まれた満席の会場に驚きながらも喜びの表情を見せた3人は、大きく手を振って歓声に応えた。

最初に古川監督が「監督の古川豪です。みなさん、楽しんでください!」と挨拶、丸山は「皆さん!こんにちは。私たちの映画をよろしくお願いします 」とそれぞれ韓国語で挨拶し、劇場は大きな歓声に包まれた。古川監督が構想から完成までに11年の歳月を費やした本作がついに初お披露目の場を迎えたことについて監督は「日本特有の差入れという文化の中で生きる人々を描いています」と緊張の面持ちで語り上映が始まった。なお上映後には盛大な拍手に迎えられ、観客からのQ&Aがスタートした。

本作の制作のきっかけを聞かれた監督は「とある作品の撮影中に東京拘置所の前に差入れ代行のお店が目に留まったことがきっかけでした。元々、滝田洋二郎監督の『おくりびと』を観て、特殊な職業を題材に扱いたいと思っていたので、この差入れ代行という仕事にとても惹かれました」と話し、金子真司の演じたことについて、丸山は「演じることになったのは、古川監督との出会いが1つのきっかけでした。そしてこの作品のお話をいただき、脚本を読んだときに“差入屋”という職業を初めて知り衝撃を受けました。身近な人間ドラマであり、人と人との繋がりの豊かさを色とりどりに描いていて、その歯車の1つになって役に立てるということが、楽しかったです。役者として今の自分にできる全ての演技・エネルギーを古川監督が引きだしてくれました」と語った。

また観客からの質問で、映画のように拘置所には匿名で差入れができることから、「匿名で何か伝えるとしたら誰に何を伝えますか?」と聞かれた丸山は「今年41歳になるのですが、今の自分を作ってくれた今までのすべての方々に感謝ですかね。そして、自分の役者としての演技を引き出してくれた監督に感謝ですね」と質問が“匿名”ということで名前は出さなかったが、隣にいた古川監督が恥ずかしそうに顔を赤らめていた。観客の質問の挙手はまだまだ続いたが、時間となり惜しまれる中、本作のワールドプレミアは終了した。コンペティション部門の結果は10月12日(土)に発表を予定している。

【提供写真、オフィシャルレポート】

『金子差入店』は2025年に全国で公開
監督・脚本:古川豪
出演:丸山隆平
 真木よう子/三浦綺羅、川口真奈
 北村匠海、村川絵梨、甲本雅裕、根岸季衣
 岸谷五朗、名取裕子
 寺尾聰
配給:ショウゲート
©2025 映画「金子差入店」製作委員会