オリジナル長編アニメーション映画『ふれる。』が10月4日(金)より全国で公開中。
同じ島で育った幼馴染、秋と諒と優太。東京・高田馬場で共同生活を始めた3人は20歳になった現在でも親友同士。それは島から連れてきた不思議な生き物「ふれる」が持つテレパシーにも似た力で趣味も性格も違う彼らを結び付けていたからだ。お互いの身体に触れ合えば心の声が聴こえてくる。それは誰にも知られていない3人だけの秘密。しかし、ある事件がきっかけとなり、「ふれる」に隠されたもう一つの力が徐々に明らかになるにつれ、3人の友情は大きく揺れ動いていく―。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011、2013)、『心が叫びたがってるんだ。』(2015)、『空の青さを知る人よ』(2019)の“心揺さぶる”青春3部作を手がけた、監督・長井龍雪、脚本・岡田麿里、キャラクターデザイン、総作画監督・田中将賀の3人が贈る、オリジナル長編アニメーション最新作。 本作では、前3部作とは違い舞台が秩父ではなく東京・高田馬場周辺、そして少年時代から移り変わり青年時代の青春を通じて人と人との繋がりを描いている。
登場人物に関しては、これまでの作品と同様に脚本家・岡田が得意としているリアルでもどかしさも感じる青年たちの友情と恋愛が描かれており、一人一人の性格の違いがセリフや行動からみられる。“親友”も「ふれる」によって親友になった3人と、幼馴染で親友の樹里と奈南という2組が対照的に描かれている。彼女たちは少々周りを巻き込む強引なところもあるが、互いをよく知り相手と向き合いながら言葉を伝えているようだ。そんな2組の違いから、違う人生を生きていても相手と向き合うことで育まれていく友情があることを感じさせる。そして、本作の鍵となっているキャラクター「ふれる」はセリフや大きな表情の移り変わりはないものの、可愛らしさとどこか不気味な目をしているシーンもありキャラクターデザイン・田中の描く新たな主人公たちにも注目だ。
もどかしい青春群像劇を描くだけでなく観客へのメッセージ性を込めている長井監督作品。SNSが発達した現在、若者だけでなく自身の感情を書き込むだけで満足したり、SNS上だけで人との繋がりを持っている人は少なくないだろう。本作はそんな現代を生きている私たちの奥底に眠る"寂しさ"を描いているように感じた。そして誰しもが心に潜ませている負の感情をさらけ出した瞬間、世界にはどのようなことが起こるのか改めて考えさせられる作品となっている。
【文/片岡由布子】
『ふれる。』は2024年10月4日(金)より全国で公開
監督:長井龍雪
声の出演:永瀬廉、坂東龍汰、前田拳太郎
白石晴香、石見舞菜香
皆川猿時、津田健次郎
配給:東宝、アニプレックス
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