10月28日に開幕する第37回東京国際映画祭の見どころを紹介。

日本で唯一の国際映画製作者連盟公認の映画祭で今年で37回目を迎える東京国際映画祭は、今年は10月28日(月)~11月6日(水)に、昨年に引き続き日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区にて開催される。

東京国際映画祭では世界三大映画祭をはじめジア各国の映画祭などで上映された作品を観ることができる。そんな受賞歴がある作品や以前に受賞した監督の最新作などを部門ごとにピックアップして紹介。日本で唯一の国際映画製作者連盟公認の映画祭で今年で37回目を迎える東京国際映画祭は、今年は10月28日(月)~11月6日(水)に、昨年に引き続き日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区にて開催される。

クロージング作品

『マルチェロ・ミオ』
監督:クリストフ・オノレ

© 2024 L.F.P. – Les Films Pelléas _ Bibi Film TV _ Lucky Red _ France 2 Cinéma _ LDRP II _ Super 8 Production _ TSF


🎬第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品

今年生誕100年を迎えるマルチェロ・マストロヤンニへのオマージュとも言うべき作品。キアラの実の母親であるカトリーヌ・ドヌーヴをはじめ、ファブリス・ルキーニ、メルヴィル・プポーなど、多くの俳優たちが自分自身を演じている。『甘い生活』(60)のトレビの泉の場面が再現されるほか、台詞の端々にマルチェロ・マストロヤンニの主演作品の題名が散りばめられている部分にも注目。

主人公は女優のキアラ・マストロヤンニ。ある夏の日、鏡を見ると、そこには父マルチェロ・マストロヤンニの顔が映っていた。その日からキアラは、父の人生を生きるべきと自分に言い聞かせ、父のような服を着て街を歩く。そして周囲の人々も彼女を「マルチェロ」と呼ぶようになる…。

ガラ・セレクション部門

日本公開前の最新作を上映する部門。今年の世界の国際映画祭で話題になった作品、国際的に知られる巨匠の最新作、本国で大ヒットした娯楽映画など、映画祭を盛り上げる作品13本を上映する。

『ブラックドック』
監督:グァン・フー

©2024 The Seventh Art Pictures (Shanghai) Co., Ltd. All Rights reserved


🏆第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」最優秀作品賞受賞

中国第6世代監督、グァン・フー監督最新作。主演は、『疾風スプリンター』(15)、『オペレーション・メコン』(16)などアジア圏で人気のエディ・ポン。そのほか、映画監督のジャ・ジャンクーも特別出演している。

2008年、北京オリンピック前。刑務所から出所した青年はゴビ砂漠の端にある故郷に戻り、地元のパトロール隊で働くことになるが、そこで黒い犬を助ける。そして、その犬と過ごすなかで様々な人と出会い、新たな人生へと踏み出すのだった。

『エマニュエル(原題)』
監督:オードレイ・ディヴァン

© 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS - GOODFELLAS - PATHÉ FILMS


🏆映画『あのこと』(21)で第78回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したオードレイ・ディヴァン監督作品

主演は『TAR/ター』(23)のノエミ・メルラン。2024年、スペインのサン・セバスティアン国際映画祭にて、オープニング作品としてワールドプレミアを迎えた話題作。

エマニュエルは仕事でオーナーからの査察依頼を受け、香港の高級ホテルに滞在しながらその裏側を調べ始めるが、ホテル関係者や妖しげな宿泊客たちとの交流は、彼女を「禁断の快感」へといざないー。

『Spirit World(原題)』
監督:エリック・クー

©m.i.movies ©Zhao Wei Films ©WildOrangeArtists ©KNOCKONWOOD Inc


🎬第29回釜山国際映画祭クロージング作品

シンガポールの鬼才エリック・クー監督がカトリーヌ・ドヌーヴを主演に迎え、共演に竹野内豊、堺正章、風吹ジュンらが名を連ねた、日・仏・シンガポールの国際共同合作。クー監督はシンガポール文化勲章をはじめ、多くの受賞歴がありフランス政府より芸術文化勲章シュヴァリエを受賞している。

フランス人歌手、クレア(カトリーヌ・ドヌーヴ)が日本でのツアー中に突然の死を遂げる。クレアの魂は異国のバルドで生き続け、そこで彼女は生者とともに旅をする、彷徨える別の魂(亡霊)に出会う。死と生の隔たりを越えて、魂が残り、救済、愛、守護天使が見つかるかもしれない死後の世界で、人間性を発見する旅が始まる。

ワールドフォーカス部門

現在の世界の映画界の潮流を示す作品を上映し、ナンニ・モレッティや生誕100周年となるマルチェロ・マストロヤンニ、メキシコの巨匠 アルトゥーロ・リプステインなどが特集上映される。

『ボーガンクロック』
監督:ベン・リヴァース

© Urth Productions 2024


🎬第77回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門で上映

EYE Art映画賞とヴェネチア映画祭FIPRESCI(国際批評家連盟)賞を受賞した『湖畔の2年間』(11)に続き、スコットランドの田舎の森の中で40年以上隠遁生活を送っている、ジェイク・ウィリアムズの日常生活を描いたドキュメンタリー。

時折訪ねて来る人々がいる以外は孤独な生活を送っているウィリアムズの姿が、16ミリフィルムのモノクロ映像(一部カラー)でとらえられている。ウィリアムズが隠遁生活を始める前にどのような生活を送っていたかなどの説明は一切省かれており、彼が収集した音楽テープや写真の数々から彼の過去を想像させる構成になっている。リヴァースは、「私たちのどちらかが亡くなるまで、彼と映画を作り続けることは間違いありません」と語っている。

『ダホメ』
監督:マティ・ディオップ


🏆第74回ベルリン映画祭金熊賞受賞

カンヌ映画祭グランプリを受賞した『アトランティックス』(19)で鮮烈なデビューを飾ったマティ・ディオップ監督の長編第2作となる。

1900年にフランスに征服されるまで、現在の西アフリカ・ベナン共和国の地に存在したダホメ王国。2021年11月にかつてフランスがダホメ王国から略奪した美術品の一部がベナンに返還されたプロセスを追うとともに、この返還をどう受けとめるかについて議論するベナンのアボメイ・カラヴィ大学の学生たちをとらえたドキュメンタリー。祖国に戻ることになった彫像のモノローグで映画を進めるなど、フィクション的な演出も盛り込まれている。

『ダイレクト・アクション』
監督:ギヨーム・カイヨー、ベン・ラッセル


🏆第74回ベルリン映画祭エンカウンター部門で最優秀作品賞受賞

ベルリンを拠点に活動するフランス人映画作家ギヨーム・カイヨーと、アメリカ出身で、フランスで活動するベン・ラッセルが共同監督。ベン・ラッセルによる撮影の見事さが際立つ傑作となっている。ベルリン映画祭でエンカウンターズ部門最優秀作品賞、ドキュメンタリー賞審査員特別賞の2賞を受賞。パリで開催されるドキュメンタリー映画祭シネマ・ドゥ・リールでもグランプリを受賞している。

50人からなる自治コミュニティを農村に形成し、2018年の国際空港拡張プロジェクトに抵抗したことで知られる、フランスで最も過激な社会活動家集団に密着したドキュメンタリー。政府による強制執行に激しく抵抗する人々の姿が生々しくとらえられている。

『陽光倶楽部』
監督:ウェイ・シュージュン

©Sichuan Haoqi Estar Culture Media Co., Ltd


🏆主演のホァン・シャオミンが第26回上海国際映画祭最優秀男優賞受賞

『川辺の過ち』(23)が国際的に高い評価を受けたウェイ・シュージュン監督の最新作。多くの映画やテレビドラマで活躍する大スター、ホアン・シャオミンがウー・ヨウ役を演じ、上海国際映画祭最優秀男優賞を受賞した作品。また、“客途秋恨”(90)などに主演した大女優、ルー・シャオフェンが母親役を演じ、ジャ・ジャンクーがツァイ博士役を怪演する。

40代ながら子どもの心を持つ青年ウー・ヨウは、ツァイ博士が主宰する「陽光倶楽部」の熱心な会員だ。一緒に暮らしている母親が重病だとわかった時、ウー・ヨウはツァイ博士から指南された独特の方法で母親を完治させようと考える。

アニメーション部門

国内の最新作と海外での話題作を集めた12作品を上映。さらにレトロスペクティブとして「宇宙戦艦ヤマト」放送開始50周年を記念した劇場版の4K上映を行い、アニメーション関連のシンポジウムが3つ開催される。

『Flow』
監督:ギンツ・ジルバロディス

©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five


🏆アヌシー国際アニメーション映画祭審査員賞、観客賞ほか4冠受賞

監督は、ラトビアの映像作家でアニメーターのギンツ・ジルバロディス。長編デビュー作『Away』(19)は、アヌシー国際アニメーション映画祭のコントルシャン賞で最優秀長編映画賞を受賞したほか、90以上の映画祭で上映された。本作はギンツ・ジルバロディス監督の長編アニメーション第2作で、カンヌ映画祭「ある視点」部門でワールドプレミア上映された。

世界が大洪水に包まれ、今にも街が消えようとするなか、ある一匹の猫は居場所を捨て、旅立つことを決意する。流れて来たボートに乗り合わせた動物達と、想像を超えた出来事や予期せぬ危機に襲われることに。しかし彼らのなかで少しずつ友情が芽生えはじめ、逞しくなっていく。彼らは運命を変えることが出来るのか? そして、この冒険の果てにあるものとは――?

『メモワール・オブ・ア・スネイル(原題)』
監督:アダム・エリオット

© Arenamedia Pty Ltd


🏆アヌシー国際アニメーション映画祭クリスタル賞(最高賞)受賞

短編『ハーヴィー・クランペット』(03)でアカデミー賞短編アニメーションを受賞したほか、全世界で100以上の受賞歴を持つアダム・エリオット監督作品。初長編『メアリー&マックス』(09)以来、1コマずつ丁寧に、8年の月日をかけて完成させた傑作。

カタツムリ集めが心の拠り所である孤独な少女グレースが、奇妙な女性ピンキーとの友情を通して希望を見出していく様子を描く、驚きとユーモア、そして感動のクレイアニメーション。

カンヌ国際映画祭

フランス南部の都市カンヌで開催される国際映画祭。世界三3大映画祭の1つに数えられ、世界中の映画人が一堂に会する映画祭として常に高い注目を集めている。カンヌはフランスを代表する観光地としても知られている。

ヴェネチア︎国際映画祭

イタリア北東部の都市であり、ヴェネト州の州都ヴェネチアで開催される国際映画祭。世界最古の国際映画祭であり世界三大映画祭の1つ。

ベルリン国際映画祭

ドイツの首都であり国内最大の都市ベルリンで開催される国際映画祭。世界三大映画祭の中で唯一首都で開催されることから国内外の注目度が高い。

釜山国際映画祭

韓国南東部の都市・釜山で開催される国際映画祭。釜山は首都ソウルに次ぐ韓国第二の都市。国際映画製作者連盟公認の国際映画祭であり、アジアを代表する映画の祭典として常に注目を集めている。

ロカルノ国際映画祭

スイス南部に位置するティチーノ州の都市、ロカルノで開催されている国際映画祭。ヴェネチア国際映画祭やカンヌ国際映画祭などと並び、世界で最も歴史のある映画祭の一つであり、国際映画製作者連盟が公認するコンペティション形式の国際映画祭として、12部門で25の賞と賞金の授与が行われている。

上海国際映画祭

中国の東海岸に位置する都市・上海で開催される国際映画祭。中国で唯一、国際映画製作者連盟公認の映画祭。

アヌシー・アニメーション国際映画祭

フランス南東部の都市・アヌシーで開催されるアニメーションの国際映画祭。アヌシー・アニメーション国際映画祭は、1960年にカンヌ国際映画祭からアニメーション部門が独立し設立された。アニメーション映画祭としては世界最大規模を誇る。

【文/片岡由布子】

第37回東京国際映画祭は2024年10月28日(月)~11月6日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区にて開催