『本心』の大阪先行上映会が10月31日(木)にTOHOシネマズなんばで行われ、池松壮亮が登壇した。
日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督の最新作『本心』。原作は、映画化も話題となった「ある男」の平野啓一郎による傑作長編小説「本心」。キャストには、近年ますます活動領域を拡張している俳優・池松壮亮を主演に迎え、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中泯、綾野剛、妻夫木聡、田中裕子ら、日本の映画界を牽引する豪華実力派俳優陣が集結。これまで映画・ドラマを合わせ8作品の石井監督作品に出演している池松が、原作を読み「今描かれるべき作品」として全幅の信頼を寄せる石井監督に企画を持ち込んだ、9作目のタッグ作となっている。舞台は、今からさらにデジタル化が進んだ少し先の将来。亡くなった母親の“本心”を知ろうとしたことから、進化する時代を彷徨う青年を映し出す、革新的なヒューマンミステリー。
前日から大阪に入り、関西のローカル番組に生出演したり取材を受けるなどしていて「大阪を感じる暇がなかったのでは?」とMCに聞かれると、「昨日の夜と今日のお昼は外に出て、食事をすることが出来ました。大阪の街を回りたい気持ちと、ドジャース戦があったので(気になって)なかなか取材に身が入らなかった(笑)」とジョークを交えて、大阪キャンペーンでの“本心”明かした。「お昼ご飯に道頓堀の今井さんへ行って、うどんすきを食べました。美味しかったです!そこでドジャースの優勝を見ながら…」と大阪を満喫したことを語り、大阪の街を歩いた際は「仮装した人もいて、とにかく人が多く、いつも活気があるが、いつも以上に活気に溢れていた」と大阪の街の賑わいに驚いた様子。さらに、MCから「ハロウィンは『死者の魂が家族のもとへ帰ってくる日』とも言われていて、今回の映画に通じるところがあるのでは?」と問われ、「無理やりですね」と苦笑いで返していた。
原作の小説を池松が読み、石井監督へ映画化の提案をしたとこについて聞かれると「監督からすぐ、メールで『これはすごい、ぜひやろう!』と言われて一気に進んだ」と映画化のきっかけを伝えた。そしてマスコミに向け「明日のニュースはドジャース一面になるだろうから」と笑いを誘いつつ、映画について「2020年、映画製作も世の中も止まって、こんな状態はいつまで続くのか?そんな中、原作に出会い、コロナは描かれてなかったけど、アフターコロナで起こるようなことがすべて描かれているような気がして、それくらい強いインパクトがありました。原作と合わせて映画を見てもらって同時代の人たちと対話ができる映画になれば良いなと思います」と真剣に本作への想いを語った。
「本当にコロナ以降、テクノロジーが急速に進化していて、この映画は昨年ならまだ難しく、しかし、来年だったら遅くなる。今年がベスト」とAI監修の専門家たちから言われた言葉も明かし、まさに今描かれるべき作品であることを強調。朔也を演じることについて聞かれると「自分たちもまだ入っていない未来に観客の皆さんとシンプルな感情で向き合っていくことが重要。朔也の肉体、感情を通して少し先の未来を一緒に迷子になって、遠回りして生きる実感を伝えることが自分の役割かな」と思いを語った。そして、母親役の田中裕子との共演については「母が亡くなってからの再会と生活と別れ、全シーンしびれる記憶が残っています」と田中の圧巻の演技を称賛した。
続いての客席からの質問コーナーでは多くの質問が飛び交った。「池松さんがリアル・アバター(劇中で登場するリアル・アバター:カメラが搭載されたゴーグルを装着し、リアル(現実)のアバター(分身)として依頼主の代わりに行動する業務)を使うとするならば、自分の代わりに何を体験させますか?」という問いには、少し悩んで「代わりに宣伝してもらいたいです。なかなか慣れないので」と苦笑い。「でもやっぱり(宣伝で)大阪に来たりはしたいので、宣伝はアバターに任せて、僕は裏で(指示出して観光して)」と回答。他にも「本作の中で気に入っているシーンは?」との問いには「母との一連のシーン、静かなエモーションのある三好とのダンスシーン」を挙げた。
また「キャストを決めるのに池松さんは意見をされたのか?」との問いには「基本的には提案したところから、なんなら普段よりも俳優に徹しようと、脚本作りや撮影の際にも石井監督、プロデューサーのいい話し相手になれればと、隣で話を聞いていました。キャストに関しては実は原作を読み終わったとき、なぜか母親だけは田中裕子さんが浮かんだんです。田中裕子さんといえば自分からすると伝説のような方でまさか自分が共演できるとは思っていませんでしたが、石井監督には伝えました」と裏話も披露した。
また「作品のなかでリアルが変わっていって自分自身が追い付けないシーンがあったけど、そんな時に池松さんはどう落とし込んでいるのか」との問い、かなり考えて、「どうなんでしょう、どう答えたらいいんだろう。俳優をやっていると、現実と虚構と物語の中で変な感覚になることは実際にあって、頭から抜けないことはあります。(そんな時は)時間がたつのを待つだけですね、何かをしているということはないですね。いかにして生きるかというのが今作のテーマなんですが…どうしましょう…」と観客に投げかけ、「うーん…パスで」と茶目っ気たっぷりのパスの回答に会場は笑いに包まれた。その他、ネタバレを含む質問も出て「こんなにネタバレしていいのかな」との一幕もあり、観客とのやりとりも楽しんだ。最後に「また大阪に戻ってこられて、うれしかったです。皆様の中に良い余韻が残って、何か生活に持ち帰っていただければなぁと思います」と締めくくった。
【提供写真、オフィシャルレポート】
『本心』は2024年11月8日(金)より全国で公開
監督・脚本:石井裕也
出演:池松壮亮
三吉彩花、水上恒司、仲野太賀/田中泯、綾野剛/妻夫木聡
田中裕子
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2024 映画『本心』製作委員会