第37回東京国際映画祭のアニメーション部門『Flow』トークショーが11月2日(土)に角川シネマ有楽町で行われ、ギンツ・ジルバロディス(監督/脚本/音楽)、マティス・カジャ(脚本)が登壇した。
10月28日(月)~11月6日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催される第37回東京国際映画祭。監督は、ラトビアの映像作家でアニメーターのギンツ・ジルバロディス。長編デビュー作『Away』(2019)は、アヌシー国際アニメーション映画祭のコントルシャン賞で最優秀長編映画賞を受賞したほか、90以上の映画祭で上映された。本作はジルバロディス監督の長編アニメーション第2作で、カンヌ映画祭「ある視点」部門でワールドプレミア上映され、アヌシー国際アニメーション映画祭審査員賞、観客賞ほか4冠を受賞した。また、日本では2025年3月14日(金)に公開が決定している。
ジルバロディス監督は初めに「日本では受け入れていただけると思っています。なぜなら日本人は猫が好きだと聞いてますので」と挨拶をすると会場からは笑いが起こった。また、脚本のカジャは「ラトビアは小さい国なんですが、ラトビアでは初というくらい様々な国を回っています」と数々の映画祭へ出品し各国を回っている喜びをみせた。
本作は可愛らしい猫が主役で水没していく世界が舞台なっているが、そのアイデアについてジルバロディス監督は「私の作品はセリフのない作品がほとんどなのでシンプルな作品にしたかった」と語り「猫は水を嫌うというのは万国共通のテーマだと思います。なので水没した世界に猫を使い、セリフのないということで猫と自然との対話を出したいと思いました」と語り、このアイデアを聞いて脚本として苦労した部分をカジャは「セリフがないというところが脚本を書く上で難しかったです。ギンツ監督は映画と同じような方法で音楽、効果音を使うので、セリフがないというものをどのような方法で観客に伝えていくのか表現が難しかった」と明かした。
前作の『Away』でもセリフがなく一人の人物の行動を追いかけていくスタイルだったがそのスタイルへのこだわりをジルバロディス監督は「イメージ重視で考えることが多く、音楽、音響、ビジュアルを通して表現をしていきたいので、実はセリフを書くのが苦手なんです」と自身のスタイルを明かし、製作過程についてカジャは「ほかのライターのアイディアがあってそこに自分が入っていくということが初めてでした。どう自分の考え方をいれていけるのか、進めていく手順が面白かったです」と語った。
主人公の猫の表情についてジルバロディス監督は「できるだけ猫に近い動き方や考えをイメージして表現しました。猫と犬が仲が悪いというのもできるだけ自然体で表現し、他の動物はもう少し表現を豊かにしてもいいのかと思いましたが、できるだけ動物の視点で表現をオーバーにしないようにしました」と観客へ感じ取ってもらえるようにこだわった面を明かした。また、ワンショットが長い点については「できるだけキャラクターを追っていくように、リアルに感じていただきたかったのですが、かなり難しかったです」と1年半ほどかかり試行錯誤して考えたという。そして、通常は絵コンテを使って作業となるが3Dを使用し複雑な作業があったと明かし、「あえてぶれたりするのは誰かがカメラを持って追っている感覚を作りたかった」と語った。
また、本作のラストシーンについてジルバロディス監督は「(エンドロール前のラストシーンは)早い段階で決まっていた」と話し、さらにエンドロール後にも監督自身が編集時に考えたシーンがあると明かした。
最後に日本での公開に向けてジルバロディス監督は「観てよかったなと思っていただきたいですし、水や風など集中しないと見逃してしまうことも多いと思うので大きいスクリーンで観てほしい」と観客へメッセージを送った。
【写真・文/片岡由布子】
第37回東京国際映画祭は2024年10月28日(月)~11月6日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区にて開催