第37回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門『雪の花 ―ともに在りて―』舞台挨拶が11月2日(土)に丸の内ピカデリーで行われ、小泉堯史監督、松坂桃李(笠原良策役)、芳根京子(笠原千穂役)が登壇した。

10月28日(月)~11月6日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催される第37回東京国際映画祭。黒澤明監督に師事し、監督デビュー作『雨あがる』(2000)以来、一貫して人間の美しい在り方を描いてきた小泉堯史監督が、吉村昭の原作「雪の花」(新潮文庫刊)を映画化。江戸時代末期。死に至る病・疱瘡(天然痘)が大流行して多くの人命が奪われていく中、福井藩の町医者・笠原良策は、どうにかして人々を救う方法を見つけようとする。妻・千穂に支えられながら、京都の蘭方医・日野鼎哉に教えを請いに出向いた良策は、異国では疫病の予防法として「種痘」が伝わっていることを知る。予防法成功の鍵となる「種痘の苗」を長崎から入手すべく、様々な困難にぶつかりながらも絶対に諦めない良策の志は、やがて藩を、そして国をも巻き込んでいく。知られざる無名の町医者は、どのようにして日本を救ったのか?笠原良策役には松坂桃李、良策の妻・千穂役に芳根京子、そして良策を導く蘭方医・日野鼎哉役に役所広司。

ワールドプレミアを迎え、「丹精込めて作った作品がみなさまの元に初めて届く日は緊張しますし、同時にとてもうれしい日でもあります。それが東京国際映画祭ということもあって、大変光栄でさらにうれしさ倍増でよろこばしいです」と挨拶した松坂。芳根は「ちょうど1年前に撮影していたねと話をさせてもらっていました」と感慨深げな様子を見せた。

今回、実在の人物を演じることについて「すごく緊張します。いろんな資料を読ませていただいて、時間をかけてゆっくり体の中に入れて現場に入ることも必要ですし、監督の演出の元で良策を生きるということは難しいことでもあったんですけど、役者さんを含めていろんな人たちの手を借りてこの役を全うすることができました」と語った。

撮影について「しっかりと本読み、リハーサルを重ねた上で、現場に入ったらカメラが据えてあって。そして全編フィルムなんです」と明かす松坂は「撮り直しがきかない緊張感が現場に入ると漂っているんです。その中でのお芝居は今までに経験したことがない緊張感といいますか高揚感もあありますし、今までに味わったあことがない気持ちになりました」と振り返った。

松坂の話に頷く芳根は、本作が2度目の小泉組となったが前回は緊張で記憶が薄くなっていたといい「しっかりと記憶に残すぞという意思を持って参加させていただきました。小泉組でしか感じられない緊張感があります」と共感していた。

松坂とは『居眠り磐音』(2019)以来の共演となる芳根は「前回ご一緒させていただいた時も時代劇だったので、和装の松坂さん和装の松坂さんのほうが見慣れてしまっているので逆に今(の舞台挨拶)が不思議」と笑いつつ、「前作は結婚する約束まではいっていたのですが結婚できずお別れをしてしまう役だったので、今回は無事結婚することができて最後まで妻として支えることができて幸せでした」と笑いを誘った。

そんな2人について「本当に素晴らしかった」と称賛する小泉監督は「歴史上の人物を描くのは難しい。その時代に対する想像力が大事なんです。それをきちんと持ってその人物を立ち上げてくれている」といい、「毎日の現場が楽しかった」と語った。

さらに本作の魅力については「芳根さんは一段と輝くシーンがあるんです。これは最後のほうまで見ていただけると分かるのですが、とてもとても芳根さんの中で初めてで疲労困憊の中、ものすごい集中力で成し遂げたシーンがあるんです」と挙げた松坂。このシーンについて芳根は「私自身心が震えた」といい、松坂が「泣き崩れていましたもんね」と明かすと。芳根は「監督の笑顔を見た時に心の底からホッとした」と振り返った。

最後に松坂は「この作品は江戸時代に多くの人たちを奪った疫病から、無名の町医者が妻や恩師、友人、様々な人たちから手を借りて、命を救った実話を基にした作品です。愛や絆がコロナの時代を経験した今だからこそ皆様に刺さるものだと実感しています」といい、「画と音も本当に素晴らしくて、見ている自分たちもスクリーンの自然の中にいるかのような引き込まれ方をします」と本作をアピールした。

【写真・文/編集部】

『雪の花 ―ともに在りて―』は2025年1月24日(金)より公開
監督:小泉堯史
出演:松坂桃李、芳根京子
 三浦貴大、宇野祥平、沖原一生、坂東龍汰、三木理紗子、新井美羽
 串田和美、矢島健一、渡辺哲/益岡徹、山本學、吉岡秀隆/役所広司
配給:松竹
©2025映画「雪の花」製作委員会

第37回東京国際映画祭は2024年10月28日(月)~11月6日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区にて開催