『まる』の大ヒット御礼舞台挨拶が11月4日(月)にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、堂本剛(沢田役)、荻上直子監督が登壇した。
堂本剛が、『金田一少年の事件簿 上海魚人伝説』(1997)以来、27年ぶりに映画主演を務める本作。堂本が演じるのは、美大卒だがアートで身を立てられず、人気現代美術家のアシスタントをしている男・沢田。独立する気配もなければ、そんな気力さえも失って、言われたことを淡々とこなすことに慣れてしまっている。ある日、通勤途中に事故に遭い、腕の怪我が原因で職を失う。部屋に帰ると床には蟻が1匹。その蟻に導かれるように描いた◯(まる)を発端に、日常が◯に浸食され始める奇想天外な物語。不思議な事態に巻き込まれていくキャラクターで、27年ぶりの主演にして新境地を魅せる。監督を務めるのは国内外で高い評価を得る荻上直子監督。
公開から2週間経った本作だが、堂本は自身のラジオにも反響が届いているとの事で「葛藤している日常とリンクしていて、10代・20代の方から長文のメッセージを沢山いただいている」と喜びをみせた。それに対して荻上監督は悪いレビューを見ないようにしていると明かすと、堂本は「作品に魂を込めているじゃないですか」と鼓舞し「大丈夫ですよ」と荻上監督へエールを送ると観客から拍手が起こった。
数々の取材で堂本をべた褒めしているという荻上監督は初タッグを組んでみて「そう思っていたけど天才でした」と絶賛すると堂本は照れた表情をみせ、さらに荻上監督は「左手で初めて書いた”〇”が本当にこの映像に映っているので」と話し「屋上の”〇”とか見事」と作中の”〇”を描くシーンについて話すと堂本も「屋上の”〇”は天才でした」と自他ともに認めている”〇”の上手さを明かした。また、MCから”〇”の展示会を提案されると会場からは大きな拍手が起こり「監督と製作会社さんがOKであればやりますけど」と前向きに話し「撮影の最終日にスタッフさんに沢山”〇”を描かされました」と明かすと荻上監督も「私も描いてもらいました」と喜びをみせた。
SNSで事前に観客から届いた質問に答えていき、一番悩んだシーンについては「沢田が”〇”を描いて100万なの200万なのとせめぎあいをするシーン」とし「物事は激しく移り変わっていくけど沢田はついていけていないので、ゆっくり現実を噛みしめながらどういうこととなっているシーンは難しかった」と静と動の難しさを明かした。また荻上監督は「トンネルを抜けて変な世界に入っていくシーン」と話し現場でも悩んでいたという。MCからスクリーンで観ると圧巻で絵としてもインパクトがありますよねと褒められると荻上監督は「でしょ!」と喜びを見せ、堂本は「人が動いている中で沢田が動いていることを強調するために、距離感やタイミングが難しかった」と話し「地元の方とか色んな方に協力していただいた」と300人ほど来たという見どころシーンの裏話を披露した。
さらに沢田の話すスピードの変化について話し合いをしたのか聞かれると堂本は「具体的にはしてないですね」と話し、最後に撮影したというラストシーンについて堂本は「自然と最初のシーンから芝居を作り上げた結果そうなったという感じですけど」と沢田を演じていく上で自然と出た演技だと明かした。また、荻上監督の分身だという綾野剛演じた横山と友達になれるか聞かれると「結局ピュアな人なので、なれるんじゃないですかね」とし「芯にピュアなところがないと人と対話するということが難しいですよね」と横山のキャラクターをピュアさが芯にある一風変わった人と話し、「沢田自身は横山のピュアさに救われている」と横山との出会いが沢田に影響したと話した。また荻上監督は横山と沢田との関係性について「うじうじとしてしまうけど、それが原動力となっている」と自身と重ね「自分の中の表と裏のネガティブな部分が穴ボコ(作中の壁の穴)で(繋がっている)という見方もできるかな」と荻上監督自身の表裏が沢田と横山で表しているようにも観ることができると話した。
そして、沢田が劇中で口笛を吹いているシーンについて堂本は「監督から沢田が口笛を吹くシーンがあるのでメロディ考えておいてねと言われたのでそのシーンに向けて考えました」と話し、荻上監督は「音楽を出してくださっていただいたものがパーフェクトだったのでそれ以上何もなく。べたべた音楽をつけなくていいですね。とわかってくださっていたのでスムーズに(進みました)」とし「マルチな才能がありますよね」と言うと会場からは大きな拍手が起こった。堂本は照れながらも「この作品はフィルムで撮ってますし、役者さん一人一人の間というものが大切に閉じ込められている。心の奥底にメッセージを届けるのには、これくらいの分量がいいかと思いました」と音楽で観客の気持ちを誘導しないようにしたと明かした。
最後に荻上監督は「50回観ていただいてもいいです(笑)今日初めて観て面白かった方は1人50人に宣伝してまた劇場に来てほしいです」と呼びかけ、堂本は「自分の人生と向き合っている人に向けてのメッセージが込められている映画ですので、いろんな方々にこの映画との橋を架けていただければと思いますし、何回か観ていくうちに感じ方が変わっていく不思議な映画でもあるので、不思議な世界も体験してこの映画を愛していただければと思います」と観客へメッセージを送った。
【写真・文/片岡由布子】
『まる』は公開中
監督・脚本:荻上直子
出演:堂本剛
綾野剛/吉岡里帆、森崎ウィン、戸塚純貴、おいでやす小田、濱田マリ
柄本明/早乙女太一、片桐はいり、吉田鋼太郎/小林聡美
配給:アスミック・エース
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