『本心』の公開記念舞台挨拶が11月9日(土)にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、妻夫木聡、田中裕子、石井裕也監督が登壇した。

日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督の最新作『本心』。原作は、映画化も話題となった「ある男」の平野啓一郎による傑作長編小説「本心」。キャストには、近年ますます活動領域を拡張している俳優・池松壮亮を主演に迎え、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中泯、綾野剛、妻夫木聡、田中裕子ら、日本の映画界を牽引する豪華実力派俳優陣が集結。これまで映画・ドラマを合わせ8作品の石井監督作品に出演している池松が、原作を読み「今描かれるべき作品」として全幅の信頼を寄せる石井監督に企画を持ち込んだ、9作目のタッグ作となっている。舞台は、今からさらにデジタル化が進んだ少し先の将来。亡くなった母親の“本心”を知ろうとしたことから、進化する時代を彷徨う青年を映し出す、革新的なヒューマンミステリー。

前日に公開初日を迎えた本作だが、「感無量というか、言葉がありません」と挨拶した池松は「原作と出会って公開まで4年かかりましたけど、当時2020年でもう少し先の未来と思って取り組んできましたが、映画と時代が追いかけっこになって」と、このタイミングで公開できたことへの喜びを口にした。その池松から原作を勧められて読んだという石井監督は、当時のことを「昨日のことのよう」と話しつつも、その原作の話をしたシチュエーションについては石井監督と池松では認識が異なるようで「記憶はあいまいで、我々の存在もあいまいで。人間って何なんだろうな、本心って何なんだろうなと感じる」と語った。

「演じているときはファンタジーのようないつか来るのかなという感覚でやっていたんですけど、反響を拝見していると、それに対する怖さと期待感が、世の中の方々がみなさん持っているんだなと考えると、同じように怖がっている人もいれば期待している人もいる」と本作への反響を受けて改めて感じている様子の水上は「そんな作品に出れてよかった」と感慨深げな様子を見せた。その水上について、池松は「破滅と紙一重にある時代に追い込まれた若者をまっすぐに演じている水上くんが気持ちよかった」と称賛した。

また、先日には“仮想空間トークイベント”が行われたが「現実なのか、仮想なのかが分からなくなってくる。テクノロジーがある前から生まれている方々はそう思われると思うんですけど、当たり前になってくる若者たちからするとそれが実体のような、現実のような感覚に陥ってしまうんだろうな」と語る水上は「今から生まれてくる子供たちが現実との境目があいまいにならないようになってほしい」と思いを明かした。

これまでにも映画やドラマでタッグを組んできた石井監督と池松だが、「最初に出会ったのが20代で。長い時間を共にしてきました」と笑顔の池松は、改めて感じた“変化や進化”については「あまりないですね。出会った頃から、今に至るまで石井さんは自分にとってずっと偉大だし、映画監督、映画作家として飽くなき探求心と高いビジョンを持って、深い洞察力を持って、常に時代とにらめっこしながら、人にはできない類を見ない映画を生み続けてきてくれている。一緒に初めて映画をやってからちょうど10年なんですけど、またこうして原作と出会った石井さんが新たな1本を生み出してくれたことを誇りに思っています」と語った。

一方で石井監督は池松、妻夫木に対して「親戚、仕事仲間…誰か一人でも道を誤らない限り人生を並走していくんじゃないかな。10年、20年空いちゃうかもしれないけれど、また一緒にできたときには特別なストーリーを持ってまた一緒に映画が作れるんだろうなという信頼。大切な人たちです」と語った。

【写真・文/編集部】

『本心』は全国で公開中
監督・脚本:石井裕也
出演:池松壮亮
三吉彩花、水上恒司、仲野太賀/田中泯、綾野剛/妻夫木聡
田中裕子
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2024 映画『本心』製作委員会