新人作家の文壇下剋上エンタテインメント『私にふさわしいホテル』でのん演じる加代子が着こなすスタイリングに注目だ。
話題作を次々と発表してきた柚木麻子のいちばん“危険な”作品ともいえる『私にふさわしいホテル』を映画化した本作。新人賞を受賞したものの、大御所作家・東十条宗典の酷評により、華々しいデビューを飾ることなく、小説を発表する場も得られなかった文学史上最も不遇な新人作家・加代子が文壇への返り咲きを狙う文壇下剋上エンタテインメント。主人公・加代子を演じるのは『さかなのこ』で新たな魅力を発揮し、俳優、アーティストとして様々な分野で活躍するのん。監督にはテレビドラマ、映画、舞台とあらゆるジャンルでヒット作を生み出し、社会現象を作ってきた堤幸彦監督。初タッグの2人が作り出す文壇下剋上エンタテインメントが誕生する。
今作は80年代を舞台にしており、スタイリングを手掛けたのは、堤監督から絶大な信頼を寄せられるスタイリスト・中村のん。中村は数々のCMや有名アーティストのスタイリングを手掛け、そのセンスは高い評価を得ている。中村の手掛けるスタイリングは、どれも当時の時代背景と主人公・加代子の個性に見事に調和しており、作品の世界観をさらに引き立てている。今回は、そんな中村のんが手掛けた加代子の5つのスタイリングに注目し、その魅力や背景に込められたこだわりなどを紐解く。これらのスタイリングに注目することで、本作の新たな見方が発見できるだろう。
1枚目は加代子が”初”の新人賞を受賞した時のスタイリング。淡いピンクベージュのワンピースは、大きな白い襟が特徴的で、クラシックな中にも可愛らしさを感じる。さらに、黒のストラップシューズを組み合わせることで、全体的に清楚で上品な印象を演出しつつ、どこか初々しい新人らしさも感じるスタイリングである。
2枚目は加代子が山の上ホテルに宿泊した時のスタイリング。80年代を彷彿とさせるトラッドな要素と落ち着いた色味が印象的だ。ブラウン系のチェック柄ジャケットを主役に、フリルのあるハイネックトップスでフェミニンさを加え、ブルーのフレアスカートが全体を軽やかにまとめている。さらに、鮮やかな赤いベレー帽がアクセントとなり、ノスタルジックな雰囲気を醸し出している。
3つ目は加代子が書店に自著を売り込みに訪れる時のスタイリング。パープルのジャケットに鮮やかな花柄のベストを組み合わせ、全体にヴィンテージ感のある雰囲気が漂う。ボトムスにはボリューム感のあるベージュのチュールスカートを取り入れ、フェミニンさと軽やかさを加えたスタイリングとなっている。レトロな要素と現代的なアレンジが絶妙に調和し、加代子の個性が現れている。
4枚目は加代子がペンネームを変え、有森樹里として新人賞を受賞した際のスタイリング。これまでの雰囲気とは一変し、ショートヘアに艶やかなブラックのアシンメトリードレスを纏い、上品さと大人っぽさが際立つ装いとなっている。足元にはブーツやストラップシューズではなくヒールを合わせており、今までとは違った雰囲気を感じるスタイリングとなっている。
5枚目は編集者・遠藤とともにスナックで飲み明かす時のスタイリング。オーバーサイズの鮮やかなグリーンのジャケットを主役に、ポップな色使いが目を引く幾何学模様のネクタイを合わせ、遊び心のあるアクセントを加えています。ヘアスタイルには細めのヘアバンドをプラスし、ナチュラルなウェーブヘアとともに、顔周りにレトロな可愛らしさをプラス。カジュアルな中にもエレガンスを感じさせる、リラックスした雰囲気が魅力のスタイリングに仕上がっている。
堤監督も「のんさんはもう完全に“加代子”でした。スタイリスト・中村のんさんの衣装を完璧に着こなして、『昭和にはこういう人が本当にいたんだろうな』と思わせることに成功している。」と述べており、監督が求める世界観とスタイリングがうまく表現ができたのだろう。加代子(のん)の他にも遠藤(田中圭)や、東十条(滝藤賢一)などのキャラクターのスタイリングにも注目して観るとより一層楽しめるだろう。
『私にふさわしいホテル』は2024年12月27日(金)より全国で公開
監督:堤幸彦
出演:のん
田中圭、滝藤賢一
田中みな実、服部樹咲、髙石あかり/橋本愛
橘ケンチ(EXILE)、光石研、若村麻由美
配給:日活/KDDI
©2012柚木麻子/新潮社 ©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会