弔辞の代筆業を通じて成長する主人公を描くヒューマンドラマ『不虚此行(原題)』(東京国際映画祭タイトル『耳をかたむけて』)が『来し方 行く末』の邦題で4月25日(金)から公開されることが決定した。

主人公のウェン・シャンは大学院まで進学しながら、脚本家として商業デビューが叶わず、不思議な同居人シャオインと暮らしながら、今は葬儀場での〈弔辞の代筆業〉のアルバイトで生計を立てている。丁寧な取材による弔辞は好評だが、本人はミドルエイジへと差し掛かる年齢で、このままで良いのか、時間を見つけては動物園へ行き、自問自答する。同居していた父親との交流が少なかった男性、共に起業した友人の突然死に戸惑う会社員、余命宣告を受けて自身の弔辞を依頼する婦人、ネットで知り合った顔も知らない声優仲間を探す女性など、様々な境遇の依頼主たちとの交流を通して、ウェンの中で止まっていた時間がゆっくりと進みだす。

弔辞作家の日常というユニークな題材を軸に、人々の人生模様や死生観を繊細に織り込んだヒューマンドラマが誕生した。主演は、華やかな時代劇スターから近年では『チィファの手紙』(18/岩井俊二)や『鵞鳥湖の夜』(19/ディアオ・イーナン)で内面を掘り下げた演技で芸域を広げる国民的人気俳優のフー・ゴー。同居人のシャオイン役は、『西湖畔に生きる』(23)で圧巻の演技を披露し、本作がフー・ゴーと三度目の共演となるウー・レイ。卒業制作『牛皮(原題)』(05)で、第55回ベルリン国際映画祭でカリガリ映画賞と国際映画批評家連盟賞を受賞したリウ・ジアイン監督が、長年の思索を重ねて熟成させた14年ぶりの待望の新作。名匠ジャ・ジャンクー(『長江哀歌』『新世紀ロマンティクス』)やディアオ・イーナン(『薄氷の殺人』)も絶賛する、柔らかで洗練された確かな力を感じさせる本作は、第25回上海映画祭で最優秀監督賞と最優秀男優賞(フー・ゴー)を受賞した。

今回解禁された予告編は、弔辞の代筆業で生計を立てるウェン・シャン(フー・ゴー)の日常の一幕から始まる。「見知らぬ人々の人生を観察する。それが僕の一番穏やかな時間だ」と静かに語るウェンの姿。長い間帰郷を避けている故郷の母からの電話に、嘘を重ねる姿に、同居人のシャオイン(ウー・レイ)は無言で抗議をする。やがて、弔辞を依頼する様々な境遇の人々の物語が重なっていく。同居していた父親と交流が少なかった男性、同僚の突然の死に戸惑う会社員(ガン・ユンチェン)、余命宣告を受けて自身の弔辞を依頼する婦人(ナー・レンホア)など。「あなたの弔辞は評判がいい」、その言葉の通り、丁寧な取材で依頼主たちに取材を重ねるウェンの姿から、彼がただ文章を綴るだけでなく、彼らの人生に寄り添いながら言葉を紡いていることがうかがえる。

依頼人の一人の女性(チー・シー)は、ネットで知り合った声優仲間の弔辞が気に入らず、ウェンのもとを訪ねてくる。彼女との会話の流れで「僕は脚本家だった」と自身の過去について話し始める姿に、かつて夢見た脚本家としての夢を諦めきれない彼の葛藤がにじむ。「でも今も物語を書いてる」という何気ない彼女の言葉をきっかけに、自転車で走り出すウェンの姿に、静かな希望を感じさせる映像となっている。ラストは「弔辞を代筆するという監督独自の視点から人生の意味や家族の絆について深く問いかけ、あらゆる感情を揺さぶる作品だ。」と名匠ジャ・ジャンクー監督が本作を絶賛するレビューで結ばれる。

また、予告編のナレーションは、『佐々木・イン・マイ・マイン』で佐々木役を演じた俳優の細川岳が担当し、「死んだ誰かについて話す人たちはどこかぶっきらぼうだったり楽しそうだったり様々だ。語り手の言葉には実感があり、表情やエピソードが素晴らしく豊かでいつのまにか身体が暖かい。映画って不思議だ。もうすこし、自分の人生を丁寧に生きたいと思った」とコメントを寄せている。

本予告編
ショート予告編

『来し方 行く末』は2025年4月25日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国で順次公開
監督・脚本:リウ・ジアイン
出演:フー・ゴー、ウー・レイ 、チー・シー、ナー・レンホア、ガン・ユンチェン
配給:ミモザフィルムズ
©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd