時代を切り拓いた知られざる“無頼”を描く『室町無頼』のVFXメイキング特別映像が解禁された。
時は室町、“応仁の乱”前夜の京―――。大飢饉と疫病の連鎖、路上に重なる無数の死骸。そんな混沌の世の中に風の如く現れ、巨大な権力に戦いを挑んだ者たちがいた…。蓮田兵衛、日本史上、初めて武士階級として一揆を起こし、歴史にただ一度だけその名を留める男。彼の元に結集した「アウトロー=無頼」たちの知られざる闘いをドラマチックに描く。己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぎ、密かに倒幕と世直しの野望を抱く無頼漢で剣の達人である主人公・蓮田兵衛を演じるのは大泉洋。兵衛に拾われ、身も心も成長する才蔵役に抜擢されたのは、なにわ男子の長尾謙杜。その才蔵に棒術を教え込む老師に柄本明、民を虐げ、贅沢にふける有力大名・名和好臣には北村一輝、高級遊女にして、男たちの間を漂う絶世の美女・芳王子役を松本若菜が演じる。そして300人もの荒くれ者を抱え、幕府から今日の治安維持と取り締まりを任される悪党一味の首領・骨皮道賢に扮するのは堤真一。兵衛とは悪友であり、宿敵ともなっていく。
今回、誰も見たことのない室町時代を描き、大迫力の一揆やアクションシーンの舞台裏が分かるVFXメイキング特別映像が解禁された。SNSでも大きな話題となっている室町時代の作りこまれた世界観や、一揆の迫力がVFX技術を通してどのように作られたのか、そして長尾謙杜演じる棒術の達人・才蔵の圧巻の1カットアクションがボリュメトリックビデオによってどのように生まれたのか分かる映像となっている。
一揆の迫力は本物の松明を使用したり、実際に人を集めてなるべくリアルで撮影しつつも、VFXでその迫力を増すように補完。現場の迫力を増しつつ、違和感のない映像を作りあげた。1カットアクションは、まずグリーンバックでの芝居をデジタルデータでキャプチャし、撮影方法を検証。美術チームが必要な足場を制作したり、逆に不要な部分を削ったりなどして調整。アクションチームはシミュレーションを元に殺陣を作り上げ、キャストは毎日のように練習と、カメラテストをした後に本番に臨むという、VFX技術をもとにまさに現場が一丸となって作り上げた。
VFXスーパーバイザーの野口光一は「VFXに丸投げではなく、各チームと相談ができる現場で設計していったことで、世界観がうまくいった」と語っている。また、300人ものエキストラが集う二条大通りの戦いのシーンは当初、時間や天候の制約がないスタジオの中での撮影が計画されていたが、ハリウッドとは異なり高さがあまりない日本のスタジオでは、照明が近くなることで自然光を表現することが不可能ということで、オープンセットで実施することになったという。ちょうど太秦の映画村の建て替えのため更地になる予定の場所があったことで実現した、奇跡のタイミングでもあったのだ。
また本作の重要な要素である『用心棒』(1961)や『マッドマックス』(1979)のような荒廃した世界観については、大泉洋が「ジェットファンの音でセリフが聞こえない」というエピソードを各所で披露している通り、背景で常に煙があがっていたり、木が揺れていたりするためCG合成には特段の苦労があった。しかし野口は、入江監督の思い描く世界観を作り上げるため「前面にどうだ!というエフェクトもあるが、本作ではバックグラウンドのVFX」を心掛けていたという。また本作のVFXは神央薬品、NHKアート、白組、VOXELなど、多くのVFX制作会社が携わり生み出されている。東映京都撮影所の職人たちの伝統と、VFX技術が融合したことで完成した『室町無頼』は上映中。
VFXメイキング特別映像
『室町無頼』は公開中
監督・脚本:入江悠
出演:大泉洋
長尾謙杜、松本若菜
遠藤雄弥、前野朋哉、阿見201、般若、武田梨奈
水澤紳吾、岩永丞威、吉本実憂、土平ドンペイ、稲荷卓央、芹澤興人
中村蒼、矢島健一、三宅弘城
柄本明、北村一輝
堤真一
配給:東映
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