『初級演技レッスン』の初日舞台挨拶が2月22日(土)に渋谷・ユーロスペースで行われ、毎熊克哉、大西礼芳、岩田奏、串田壮史監督が登壇した。

初長編映画『写真の女』で世界の国際映画祭で40冠を達成し、鮮烈なデビューを果たした串田壮史監督は、CMディレクターとして数々の賞を受賞し、監督2作目の『マイマザーズアイズ』(2023)でも、イギリス最大のホラー映画祭である「ロンドンフライトフェスト」で“Jホラー第3波の幕開け”と評されるなど、ジャンルを問わず作品を発表し続け、海外マーケットからも注目を浴びている映像作家。

主演を務めた毎熊は「脚本を読んだとき、“一体どんな映画になるんだろう?”と感じました。それが撮影していくうちに“これは良い映画になる”という確信に変わりました」と挨拶。串田監督は「ビシッとした結末がある映画ではないので、皆さん、観終わった直後でモヤモヤされているかと思います(笑)ただ登場人物がどこかで生きているように作ったつもりです。ふと街を歩いている時でも、このキャラクターの気配を感じてほしい」と呼びかけた。

ミステリアスな演技講師・蝶野を演じた毎熊は、脚本を読んだ時の印象について聞かれると「時間軸が行ったり来たりしながら、全部繋がるようにできている。台本もそのように書いてはいるのですが、どういう作風になるのかが文字だけだとすごく難しかったです。でも『初級演技レッスン』は串田さんの3本目の映画で、過去作2本もテイストこそ違いますが、“緻密さ”は全ての作品に共通してあると思いました。これはもうわかったかわからないかは重要ではないのかなと思いました」と語った。

一方、蝶野との出会いによって不思議な体験をすることになる千歌子を演じた大西は「脚本の印象は、(脚本に書かれた)言葉(ト書)を通して、シーンの画がはっきりと立ち上がってきました。他の作品ではなかなかない体験でした」と挨拶。それを聞いていた串田監督は「僕の脚本はト書が多く、セリフが少ない。いわゆるシナリオ学校でよく見るタイプの脚本とは違うと思います」と自身の作劇について自己分析。

次に、印象に残ったシーンについて話が及ぶと、毎熊は、蝶野と一晟が夜の海辺で貝殻を探すシーンの撮影時の話を展開。「一見、黒ずくめの男と年の離れた少年が海辺で何をやってるんだ?みたいな些細なシーンじゃないですか(笑)でも2人で綺麗なものを見つけるんだけど、そのまま流れていってしまうという、なんとも切ない気持ちになるシーンで、すごく好きなんです」と話すと、大西は「とあるシリアスなシーンで、ロケ地となったお店の有線からボサノヴァがかかっていて(笑)千歌子の悲しみと、どこかのんきなボサノヴァとの対比が面白かった」と明かし会場の笑いを誘いつつ、「でも現実ってこのぐらい残酷なものかもしれないと感じた時間でもありました」と述懐。そして岩田は「最後、3人が別れていくシーンの表情が印象に残っています。寂しい感じがするんですけど、ちょっと温かい空気もあって……」と振り返ると、串田監督は「3人がY字路で別れるシーンで、彼らはもう2度と会うことがないのだということを表現しました。セリフはなくても、非常に映画的なシーンになったと感じています」とシーンに込めた思いを明かした。

最後に、観客へのメッセージを求められたキャスト陣。岩田は「監督から“岩田くんはそのままの感じでいてくれたらいいよ”とおっしゃってくださいました。自分の雰囲気のままだからこそ、演技について考えるきっかけになった映画です。皆さんがどんな解釈をされるのか楽しみです」、大西は「ユーロスペースは学生の時に初めて出演したデビュー作を上映していただき、今日はその時ぶりの登壇になります。自分の辛い過去から目を背けてきた千歌子が、お芝居を通して抱いた気持ちを、私も今後芝居をする上で大事にしていきたいと思いました」、そして毎熊は「ここ、ユーロスペースは僕にとって思い入れの深い場所。『初級演技レッスン』に出演することになったのも、串田さんのデビュー作『写真の女』の上映終わりで話したことがきっかけでした。わかりやすい映画ではないし、宣伝も難しいですが、観てもらえると心に残る映画になっていると思っています。これから先、伝染していくきっかけになるのはここにいる皆様だと思います。たくさんの方に見てもらいたいので、応援してもらえたら」と呼びかけ、舞台挨拶を締めくくった。

【提供写真、オフィシャルレポート】

『初級演技レッスン』は2025年2月22日(土)より渋谷ユーロスペース、MOVIX川口ほか全国で順次公開
監督・脚本・編集:串田壮史
出演:毎熊克哉、大西礼芳、岩田奏、鯉沼トキ、森啓一朗、柾賢志、永井秀樹
 石井そら、中村天音、大滝樹、村田凪、高見澤咲
配給:インターフィルム
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