第36回東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞を受賞した『TATAMI』の本編映像が解禁された。
ジョージアの首都トビリシで開催中の女子世界柔道選手権。イラン代表のレイラ・ホセイニとコーチのマルヤム・ガンバリは、順調に勝ち進んでいくが、金メダルを目前に、政府から敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるため棄権を命じられる。自分自身と人質に取られた家族にも危険が及ぶ中、怪我を装ってイラン政府に従うか、それとも自由と尊厳のために戦い続けるか。人生最大の決断を迫られる……。2019年、日本武道館での世界柔道選手権で実際に起こった事件をベースに映画化された。『SKIN 短編』(2018)で第91回アカデミー賞短編実写映画賞を受賞し、A24配給の長編版も発表したイスラエル出身のガイ・ナッティヴと、『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2022)で第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したザーラ・アミールが共同で監督した本作『TATAMI』は、実話をベースにした社会派ドラマ。スポーツ界への政治介入や中東の複雑な情勢、イラン社会における女性への抑圧を背景に、アスリートたちの不屈の“戦い”を臨場感溢れる映像で描き出す。
今回解禁された本編映像は、トーナメント形式の大会で試合が続き、消耗しているレイラ(アリエンヌ・マンディ)がそれでも前へ進む姿を背後からとらえる。相手と組み合った彼女は慎重に間合いを探り相手を倒すが、審判から「待て」の声がかかる。一瞬の隙も見せられない試合を続けるレイラを、会場の扉の外から監督のマルヤム(ザーラ・アミール)が心配げに見つめている。既にレイラは息も絶え絶え、対戦相手を見つめる視点もぼやけている。転びかけてなんとか踏ん張るものの、息を吸うのもやっとの苦しい状態に追い込まれている。
呼吸を整えようともがいているレイラの苦闘、その姿をじっと見つめていたマルヤムは、いたたまれなくなって試合場に足を踏み入れる。「レイラ、私よ。私が付いてる」と叫ぶと、自分の席(監督席)から「しっかりして!試合に戻りなさい」とエールを送る。観客席にはふたりを監視する国の工作員の姿がよぎり、「どうした」とドクターが声をかける。息が詰まりそうなレイラは、自身のアイデンティティの象徴であるヒシャブを取り払う。彼女の額には、鏡に頭を打ち付けた時にできた苦悩の傷からの血が滲む。世界柔道協会(WJA)のステイシー・トラヴィス(ジェイミー・レイ・ニューマン)も駆けつけ「無理なら続けなくていい」と言葉をかける。その時、孤独な戦いを続けるレイラへの励ましの拍手が沸き起こっていた。「棄権せよ」—国家からの厳命を受けたレイラとマルヤムは、それでも試合を続けることになる。自由と尊厳のために戦うことを決意したふたりにどんな運命が待ち受けるのか。その結末は、映画館の大画面で見届けていただきたい。
本編映像
『TATAMI』は全国で公開中
監督:ガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミール
出演:アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミール、ジェイミー・レイ・ニューマン
配給:ミモザフィルムズ
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