直木賞作家・辻村深月による青春小説を映画化した『この夏の星を見る』が7月4日(金)より公開されることが決定した。
本作の原作「この夏の星を見る」は、北海道新聞、東京新聞、中日新聞、西日本新聞、河北新報、山梨日日新聞の各紙に2021年6月から2022年11月まで順次掲載され、2023年6月にKADOKAWAから刊行された長編小説で、今年6月には角川文庫、角川つばさ文庫にてそれぞれ上下巻での文庫化を予定している。2020年、新型コロナウィルスが蔓延したコロナ禍を背景に、登校や部活動が次々と制限され、さらに緊急事態宣言に直面し、大人以上に複雑な思いを抱える中高生たちの青春を描いた作品。未曽有の事態の中、哀しさやもどかしさ、そして優しさ、温かさといった人々の思いを描き出した感動の青春小説は幅広い世代から支持され、昨夏の映画化発表以降、続報が待ち望まれていた。
「この夏の星を見る」を手掛けた辻村深月は、2004年「冷たい校舎の時は止まる」でメフィスト賞を受賞しデビュー。2011年「ツナグ」で吉川英治文学新人賞、 2012年「鍵のない夢を見る」で直木賞、 2018年「かがみの孤城」で本屋大賞を受賞。同作は2022年に劇場アニメとして公開され、興行収入10億円を超えるヒットを記録、第46回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞している。主な著書に「凍りのくじら」、「ぼくのメジャースプーン」、「ツナグ」、「鍵のない夢を見る」、「ハケンアニメ」、「朝が来る」、「傲慢と善良」など映画化された作品も多く、日本を代表する作家として数多くの読者を魅了し続けている。
茨城県立砂浦第三高校の二年生・溪本亜紗を演じるのは、映画やドラマ、CMなど近年の活躍が目覚ましい実力派俳優の桜田ひより。ヒロインとして出演した映画『交換ウソ日記』(23)をはじめ、『バジーノイズ』(24)や『大きな玉ねぎの下で』(25)などの映画で主演を務め、また、「silent」(22/フジテレビ)や「あたりのキッチン!」(23/東海テレビ・フジテレビ)、「あの子の子ども」(24/関西テレビ・フジテレビ)や「相続探偵」(25/日本テレビ)といった数多くのテレビドラマにも出演。さらに2018年9月から2023年3月までファッション誌「Seventeen」(集英社)の専属モデルを務め、同世代の女性読者からも厚い支持を得た。本作『この夏の星を見る』では、これまで誰も経験したことのないコロナ禍において、不安な気持ちや悩みを抱えながらも懸命に生きる高校生の亜紗を確かな演技力と多彩な表現力で見事に演じきっている。
そして、本作はこれからの次代を牽引していくことが期待される若きクリエイターのデビュー作品となる。監督を務めるのは、1993年月22日生まれ、大阪府出身、大阪芸術大学映像学科を卒業した山元環。2019年に公開されたショートフィルム 『ワンナイトのあとに』がYouTubeで300万回再生され話題になり、その後、監督・脚本を務めたBUMP配信ドラマ「今日も浮つく、あなたは 燃える。」の切り抜き等がSNSで総再生回数4億回を超える。昨今では「夫婦が壊れるとき」(NTV)、「沼オトコと沼落ちオンナのmidnight call~寝不足の原因は自分にある。~」(TX)、「痛ぶる恋の、ようなもの」(TX)では監督・脚本を務める。斬新な映像表現とキャラクター造形の深さに定評があり、トップランナーとして映像界を疾走している新進気鋭のアーティスト。
脚本は、1996年9月24日生まれ、埼玉県出身、法政大学文学部日本文学科を卒業した森野マッシュ。広告代理店勤務を経て、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻脚本領域を修了。坂元裕二教授の元で脚本を学び、「FIN」にて第47回城戸賞最終選考に選される。2022年に『ケの日のケケケ』が第47回創作テレビドラマ大賞にて大賞 を受賞。近年では、「沼オトコと沼落ちオン ナのmidnight call~寝不足の原因は自分にある。~」(TX)や「君となら恋をしてみても」(MBS)、「VRおじさんの初恋」(NHK)の脚本を担当。デリケートな心を真面目に描くだけではなく、物語として昇華させる 力量は、脚本家の中でもトップクラスの水準を誇る実力者。
音楽を担当するのはharuka nakamura。音楽の枠組みを超えた各方面から注目される話題のアーティストであり、昨年は蔦屋書店とのコラボレーション音楽「青い森」シリーズ4作品を発表(ジャケット写真は全て写真家・川内倫子が担当)。アパレルブランド「THE NORTH FACE」とも四季に渡るコラボレーションアルバム4作品を発表。写真家・星野道夫の写真展にて演奏会「旅をする音楽」を東京都写真美術館、帯広などで開催。国立近代美術館「ガウディとサグラダファミリア展」NHKスペシャルのテーマ音楽などを担当。代官山 蔦屋書店にて展覧会を開催。また、Nujabesと音楽制作を共にした時間があり、多数のコラボ作品を発表しています。オリジナル音楽作品も長く人気があり、初期作品からほぼ全てのアルバムがアナログレコード化され再発売を続けている。
辻村深月(原作)コメント
物語の舞台は2020年、コロナ禍の一年目です。天文部を描いたきっかけは、誰にとっても非日常だったあの日々の中で野外の部活動ならばできるのではないかという単純な思いからでした。けれど、宇宙に目を向けたから見えたこと、著者の私が主人公たちを通じて見せてもらった景色がたくさんあります。志を同じくし、彼らに共感してくださったスタッフ・キャストの皆さんが映画の中で広げてくださった世界もまさにそのひとつです。
皆さんにも、彼らが「この夏」に見た星の輝きを一緒に見届けていただけたら、とても光栄に思います。
桜田ひより コメント
原作者の辻村さんの作品は以前から読ませていただいていたので、出演が決まった時に、まさか自分が辻村さんの世界観に入れるなんて…という嬉しさが込み上がりました。学生時代のなんでもないことで笑い合えたり、一緒に熱くなれる瞬間を同世代の俳優の方々と大切に演じていこうと思いました。
撮影は実際に原作に登場する高校を使わせていただいたので、感謝の気持ちでいっぱいです。
山元監督は歳がものすごく離れているわけではなかったので、感性や笑いのポイントなどが近いなと感じられる部分も多く、共感し合いながら撮影を進めることができました。共演者のみなさんも本当に素敵な演技をされる方ばかりだったので、たくさん刺激をいただきました。
映画がどのような仕上がりになっているか私自身とても楽しみです。
山元環(監督)コメント
――コロナ禍を演出する上での挑戦
表現においても色々な挑戦をしましたが、特に“マスクで表情が隠れてしまう制限を恐れないで描く”ことが挑戦でした。マスクは表情の60%以上を隠し、どうしても人の情報量を減らしてしまいます。マスクを外さないということを徹底した結果、マスクは透明になり、更にマスクを外すことでシーンの鮮度はまた変わります。
この映画は、感情がマスクを飛び越えて、普通では味わえない楽しみがある映画に仕上がっています。
――初の劇場長編映画を手掛けてみて
登場人物の数/コロナ禍/マスク/星/望遠鏡など、脚本段階から制作まで一筋縄ではいかない題材の映画でしたが、とにかく想像して、模索して、原作同様に真っ直ぐ熱く届くように作りました。商業映画初監督ですが、映画の力を信じて作れたことに喜びを感じています。『この夏の星を見る』の映画の温度が、少しでも観た人の心の栄養になれば嬉しいです。
――辻村先生とのエピソード
この物語は若者に向けられた辻村先生からのエールです。この物語を監督するにあたり、若手である僕の起用を「若い人達にこそ作ってほしい」と言ってくださり、自分を信じて映画を作ろうと思えました。この映画を作った僕自身が、エールをもらい、勇気をもらえたような気がします。
――主演桜田さんや若いネクストブレイクキャストさんの印象
主演の桜田ひよりさんは、マスクなんて悠々と飛び越え、逆に表情が印象的で際立っていて、声もとても良かった。ひよりさんの声で表現される言葉に体重を感じて、モニター前で嬉しくなったのを覚えています。
他にも鮮度のある実力派の若手から個性のある俳優の方々まで、観ていただけたら分かる魅力のあるキャラクター達に仕上がっています。コロナ禍で切望した繋がりのある世界を存分に躍動していただきました。
森野マッシュ(脚本)コメント
原作小説の中で繊細かつリアルに語られる、マスクをつけた学生たちの心の内を映像的に表現するという挑戦はとても難しいものでした。それでも、コロナ禍であっても自分にできることを見つけて眩しく輝いている登場人物たちへの憧れが原動力となり、初の映画脚本を書き切ることができました。若手である私たちの代表作になるようにと、常に脚本に寄り添い、やわらかく見守ってくださった辻村先生に、心から感謝をお伝えしたいです。楽しんでいただけますように!
ストーリー
コロナ禍に覆われた2020年。部活動を制限された中高生たちが挑んだのは、リモート会議を駆使して同時に天体観測をする競技「スターキャッチコンテスト」。茨城、東京、長崎五島の中高生が始めたこの活動がやがて全国に広がり、ある奇跡をもたらしていく――。
『この夏の星を見る』は2025年7月4日(金)より全国で公開
監督:山元環
出演:桜田ひより
配給:東映