『花まんま』の完成報告会見が3月31日(月)に都内で行われ、鈴木亮平、有村架純、前田哲監督が登壇した。
2005年、第133回直木賞を受賞した短編集『花まんま』(文春文庫)は、記憶の濃淡を丁寧に語り分けながら、人間の哀しさや温かさを繊細に織り込む巧みな筆致で評価される作家・朱川湊人の代表作で、ある兄妹の不思議な体験を描いた物語。初版からおよそ20年を経て映画化される。早逝した両親と交わした「兄貴はどんな時も妹を守るんや」という約束を胸に、たった一人の妹の親代わりとして大阪下町で生きる熱血漢の兄・俊樹を鈴木亮平、まもなくの結婚を控えながら、実はある〈秘密〉を抱えている妹・フミ子を有村架純が演じ、前田哲監督がメガホンをとる。
初めて脚本を読んだ時の印象を「ずるいくらい感動させられる脚本だと思いました」という鈴木は、完成した作品を見て「全く同じ感想だったのでさすが前田監督だなと思いました」と振り返り、本作に込められた思いを汲んで「いろんなメッセージを受け取れる深い作品になっているところが好きなところ」と明かした。
「とても懐かしい気持ちになって、でもどこかクスッと笑える。新しい作品ができるんじゃないかなと思って参加させていただきました」とオファーを振り返った有村は「これまでの自分が過ごしてきた時間だったり、(自身が)30代を迎えたんですけど、親元を離れて、10何年間1人でやれてこれたんだなといろんなことを回想する脚本でした」と語った。
その有村は、完成した映画を鑑賞して「脚本を読んだ軽快な空気感がしっかりと反映されていて、とても見やすい中にもそれぞれのキャラクターの群像劇みたいな風にまとまっていて」と印象を語り、「ファンタジーな部分も違和感を持つことなくその世界にしっかりと馴染んでいて。『花まんま』という世界ができあがっていると感じました」と語った。
本作で初共演という鈴木と有村だが「びっくりするほど初日から兄妹感を感じられたという面では個人的には相性が良かったと思っています」と話す鈴木に、有村も「私も思っています」と笑うなどチームワークの良さをうかがわせる2人。続けて、鈴木は「東京で仕事したら初日からここまで踏み込むと嫌がられるかなというところを、関西弁だと壁を乗り越えられる」と話し、「自然と2人でやれたのは有村さんだったからよかった」と印象を明かした。有村も「『ただいま』と言いたくなる空気感を作ってくださっていて。初日から一切壁を感じることなく、“兄やん”としてたたずんでくださっていた」といい、「いろんな感情を引き出していただいた」と明かした。
一方で、そんな2人の関係性について、クランクイン前には「現実にいる兄妹の関係性をやりたい」と話したという鈴木は「大阪の人たちが見た時に、『分かるわ』というところを目指したかった」と思いを明かした。さらに「両親を亡くしてから男手ひとつで妹を育ててきた立派な優しい兄ではあるのですが、“妹を一人で育てられた俺、最高”というある種、自分勝手な人間にすることで妹への愛が引き立つことを意識していました」と役について語った。
また、「人物たちの距離感はどの作品においても、作品に入る前に考える部分があって」という有村は「距離感を整理しながら、フミ子には別の女性の記憶があるというところで、考える部分があった」と役作りを振り返り、「俯瞰で見ている冷静さも持ち合わせている女性だと思ったので、突然記憶が切り替わるではなく、心に人がいる、そういった感覚を意識しながら演じていました」と振り返った。
【写真・文/編集部】
『花まんま』は2025年4月25日(金)より全国で公開
監督:前田哲
出演:鈴木亮平、有村架純、鈴鹿央士、ファーストサマーウイカ、酒向芳、六角精児、キムラ緑子
配給:東映
©2025「花まんま」製作委員会