ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女~

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レビュー

『ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女~』

かつて見たことがないおしゃれでロマンティックなヴァンパイア・ホラー

イランのどこかにある架空の町を舞台にしたペルシャ語のヴァンパイア映画。それだけで興味を惹かれる方もいるかもしれないが、本作はヴァンパイア・ホラーというジャンルに新たな風穴を開ける作品となるだろう。監督を務めるのは本作が長編映画デビューとなるアナ・リリ・アミリプール。サンダンス映画祭のNEXT部門でワールドプレミアされたほか、シッチェス映画祭では新人監督賞も受賞している。本作の舞台はジャンキー、ポン引き、娼婦、死と絶望に満ちている町、バッド・シティ。ここに住む青年アラシュは父親の借金の返済代わりに奪われた愛車を取り戻しに、売人の家へ向かう。もうひとりの主人公でもある少女は、暗闇の中で黒いチャドルを身に纏い、標的の首筋に鋭い牙を立てるヴァンパイア。

本作は全編モノクロで描かれており、より一層ヴァンパイアの存在が残忍に映る。しかし、それ以上にとてもおしゃれなのだ。ロック、テクノ、少し懐かしい感じもする聞いていて心地よい音楽が流れてくる。これはなんとも不思議な気分になる。またヴァンパイアである少女の部屋はポスター、装飾、その全てがヴァンパイアということを忘れてしまうような普通の女の子の部屋なのだ。そもそも普段はヴァンパイアは普通の女の子なのかもしれない。夜になると致し方なく町に繰り出して獲物を探しているのかもしれない。そう思うしかないほど可愛らしい。

アナ監督は本作をイランで撮りたかったがそれは叶わず、カリフォルニア州で荒廃した町を見つけ、そこに架空の町を作ったという。全てが彼女の創造によるものなのだが、むしろ創造されたものだからこそ、この不思議な現実なのか非現実なのか分からない空気感を出せているので、結果的には良かったのかもしれない。監督が「音楽は次元を超える魔法」と言うように、ぜひ本作でその音楽に酔いしれて欲しい。

(text:編集部)

『ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女~』
(原題:A Girl Walks Home Alone at Night)
2015年9月19日(土)より新宿シネマカリテほか全国で順次公開!
アメリカ/2014年/101分
監督:アナ・リリ・アミリプール
出演:シェイラ・ヴァンド、アラシュ・ラマンディ、マーシャル・マネシュ

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