ベテラン

レビュー

『ベテラン』

徹底的な正義vs悪の戦い

『 ベルリンファイル』などのリュ・スンワン監督が韓国最大のタブーとされている財閥の闇に挑む本作。韓国では公開から3日で動員100万人を突破し話題となった。歴代3位の大ヒットを記録するほど人気となった本作だが、主演は『国際市場で逢いましょう』が記憶に新しいファン・ジョンミン。財閥の御曹司にユ・アイン。さらに、オ・ダルスなど人気と実力を兼ね備えた俳優が揃っている。ただ、キャストが良かったからというだけではここまでのヒットにはならなかっただろう。正義の味方と悪者という構図が非常にハッキリとしていて、分かりやすい上に、韓国の社会情勢も重なって多くの人の心に響いたのだろう。

ファン・ジョンミンが演じるのは、うだつの上がらないベテラン刑事ソ・ドチョルだが、正義感が強く、一度火がつくと誰も止められない。これだけだと迷惑な男に聞こえるが、なぜか許せてしまう。その絶妙な演技は彼の持ち味だろう。その表情を見るとつい応援したくなってしまう。クラスに一人はいるような、意識せずとも周りに人が集まるキャラクター。対するユ・アイン演じる財閥の御曹司チョ・テオ。映画史に残る!と言っても過言でないほど、とんでもない男だ。平常心を保つのが難しくなるほどイライラしてくる。韓国ではいくつかの財閥グループが国家の経済を支えているとのことで、呆れるような振る舞いがバッシングを浴びることも増えてきているそうだ。その思いが、このチョ・テオというキャラクターに込められているのだろう。ある意味、現代の象徴はソ・ドチョルではなく、チョ・テオなのかもしれない。そのチョ・テオを演じきったユ・アインは、初の悪役とは思えないほどの完成度の高さで、思わず今後のキャリアを心配してしまうほど。そして忘れてはならないのが、チーム長を演じるオ・ダルス。出てくるだけで全てを持っていってしまうようないい味を出している。全体的に正統派アクションという空気が強い中、少し心を和らげるクッションのような役割をしている。

見どころは濃い俳優陣だけではない。都心でのカーチェイスシーンは実際に明洞の中心部で撮影しており、大迫力のアクションには目を奪われる。ハリウッド映画にも引けを取らない完成度の高さを感じる。正義は勝つのかー、ぜひ作品を見て確かめて欲しい。

(text:編集部)

『ベテラン』
(英題:Veteran)
12月12日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国で順次公開!
韓国/2015年/124分
監督:リュ・スンワン
出演:ファン・ジョンミン、ユ・アイン、オ・ダルス、キム・シフ
配給:CJ Entertainment Japan

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