『ハローグッバイ』

第29回東京国際映画祭
作品レビュー
日本映画スプラッシュ部門『ハローグッバイ』

女子高校生の水野はづきと今村葵はクラスでは交わることのない二人。はづきは表だけの友達関係に悩み、葵はクラスの委員長で学校でも家庭でも孤独に悩んでいる。認知症のおばあちゃん(悦子)はある人に手紙を渡したいと出掛ける。二人はおばあちゃんと出会い、ぶつかりあい、認めあいながらも成長していく。監督は助監督として『64-ロクヨン-』、『舟を編む』、『岸辺の旅』などの数々の名作を支え、初監督作品『ディアーディアー』(2015)がモントリオール世界映画祭に正式出品されるなど注目の菊池健雄監督。若手注目株の荻原みのり、久保田紗友がダブル主演。二人を結びつけるおばあちゃん役をもたいまさこが務める。

クラスの中心で友達が沢山いるから、家がお金持ちで沢山親からお金を貰うことができるからといって幸せというわけではない。女子高生ならではの素直な悩みや葛藤を描いているため多くの若い子が共感できるのではないだろうか。万引き、妊娠、友達といった問題を真正面から向かい合う。認知症のおばあちゃんが大切に握りしめている手紙をきっかけに、クラスでは全く違う境遇のはづきと葵がいっきに近づく。年をとってから想いあう友達がどれだけ貴重なのか、複雑ではあるが大人になってからわかる大切な気持ちを教えてくれる。二人の女子高生とともに観ている人も成長することができる。綺麗で心に残るおばあちゃんの思い出の曲と共に静かに優しく物語が展開されていく。これから注目の若手女優がフレッシュで純粋な演技を見せるなか、もたいまさこが認知症を担うおばあちゃんを貫禄のある、名演技を見せる。

【文・片岡由布子】

『ハローグッバイ』 ©2016 Sony Music Artists

『ハローグッバイ』
©2016 Sony Music Artists

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